さて、ここまで長くなったが、いよいよフィードバックのやり方を紹介する。

「4ステップフィードバック」

部下のモチベーションを維持しパフォーマンスを上げるフィードバックのやり方だ。

ネガティブ・フィードバックの前提

相手のため

フィードバックは相手のためにするのであって、自分のためにするのではない。

愛情

フィードバックは愛情を伴って与えることであって、憎しみを伴うものではない。

情報を与える

情報を与えるのであって、責めるものではない。

また、アドバイスでもない。

謙虚

あくまでも自分の見方は自分の見方であり、それがすべてではないということを知っている必要がある。また、「自分は正しい」というものを強烈に握りしめた状態だと、フィードバックが無駄にきつくなったり、本当は違ったのにそれを受け入れられなくなってしまったりする。

ネガティブ・フィードバックの手順とやり方

手順1:フィードバックの枠組みづくり

フィードバックを伝えるまえに、「枠組みづくり」が必要。これは、相手が「フィードバックを受け取る準備をする」大事なプロセスだ。

キャッチボールに例えれば、相手を振り向かせて、グローブを着けさせるイメージ。違う方向を向いている相手に向かっていきなりボールをぶつければ当然痛いし頭にも来る。こちらを向いていたとしても、素手では痛い。というわけで、冒頭のこの部分は少し丁寧に行う。

①許可を求める

「フィードバックがあるんだけど、伝えてもいいかな?」
「ひとつフィードバックしていい?」
「伝えたいことがあるんだけど、いいかな?」

できるだけニュートラルに確認する。相手の中で、「自分には選択権があった」というだけでも、フィードバックを受け取るときの納得感が違う。さらにそれに対して、「はいといった」という事実が、受け取ることに責任感を生んでいく。

NOだったら言わない

もし「NO」という答えが返ってきたら、「わかった」ということで堪える。時間を変えて、あるいは他の形で伝えることを考える。
NOというのは、大きく2つの可能性がある。ひとつは、その人の中で、「今は受け取る準備ができません」というサイン。もうひとつは、「あなたのことは信頼していません」というサイン。
いずれにしても謙虚に受け止め、その後の対応を考える。

②テーマを伝える

何に関するフィードバックを与えるのかを明らかにする。テーマを伝えただけで、相手はピンとくるかもしれない。
何の話に関してフィードバックされるのか。それがわかることで、さらに相手の心構えができる。

手順1.5:質問をする

これはしてもしなくてもいい。テーマを示した段階で、「何か思い当たることはあるかな」と訊く。すると、相手は「こういうことですかね?」と話し始める。相手が勝手に気づいていくのであれば、わざわざフィードバックする必要はなくなる。むしろ承認で終わらせる。

手順2:フィードバックを伝える

前々回のブログでお伝えしたが、フィードバックには内容と種類がある。どのフィードバックを伝えるかは、相手の正確や状況、フィードバックの内容、お互いの関係性にもよる。
そして、フィードバックの目的は「パフォーマンスが改善されること」なので、この目的が達成されるフィードバックの内容を選び、必要に応じて組み合わせる。
以下に示すことがすべてではないが、

フィードバック例1:事実のみ伝える

観察した客観的事実だけを伝えて、相手が気づき、パフォーマンスの向上が見られるのであれば、これだけを伝えればOK。
自分の解釈や判断の部分は伝えたくなってしまうのだが、本人がすでに気づいているのであれば、傷を深堀りする必要はまったくない。むしろ気づいたことにポジティブなフィードバックを与え、その場を終わらせるのが望ましい形。

フィードバック例2:事実と気持ちを伝える

「あなたの行動を見ていて、私はこういう気持ちになった」と伝えることで、自分の行動と周りの人に与える影響の因果関係を理解し、パフォーマンスが変わるということが起きる。

フィードバック例3:判断のみを伝える

こちらの解釈・評価・判断のみを伝え、相手の行動を考えさせる。自分のどういう行動や考え方が、相手にそういう影響を与えたのかということ。

こればかりだと、いやらしくなる可能性もある。

フィードバック例4:事実→解釈や判断を伝える

これが一番納得度が高く、論理的にも的を射ている。事実を伝え、それに対して自分はどのように感じたのか。
倒置法でも構わない。どう見えたのか。それはなぜか。

手順3.フィードバックの感想や相手の言い分を訊く

最後に、伝えたことについて、どのように感じたか、コーチからは見えていない相手の状況や周りの状況があるかもしれない。それを言い分(言い訳ではない)として口に去せることは非常に重要なこと。これを話させないと「わかってくれていない」という不満や不安、不信につながる。

また、感想を訊くことで、相手がどのように自分のフィードバックを受け取ったのかがわかる。何が伝わって、何が伝わらなかったのか。伝わらない、あるいは誤解があると感じたことは、さらにコミュニケーションを深めて、誤解がない状態をつくっていく必要がある。

手順4.クロージング

クロージングで伝えたらいいことは例えば以下のようなこと。

・フィードバックを受け取ってくれたことへの感謝
・フィードバックを受け取って感じた相手の変化
・今後への期待
・日頃の承認
・一緒に頑張っていこうというメッセージ

など

まとめ

というわけで、

「4ステップフィードバック」。
1.枠組みをつくること
2.フィードバックすること
3.相手の言い分や感想を聴くこと
4.クロージングすること

注意すべきは、いきなりボールをぶつけているということ。愛のない、痛いフィードバックが、日々やりとりされている。相手を存分に尊重し、愛し、相手がパフォーマンスを最大化できる存在なんだということを心から信じてフィードバックを与えていく。
心の持ち用を変化させること、そして、正しい手順でフィードバックすること。
この2つによって、フィードバックの質は大きく変化し、相手との関係性も変わってくるはずです。

次回のブログ

部下のモチベーションを維持しパフォーマンスを上げるフィードバック⑦フィードバックのバランス

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