信頼関係は今あるものが始まり

1on1ミーティングにおいて、特にコーチングの要素を使った関わりについては、一定以上の信頼関係がなければ機能しない。質問しても、「この人の質問に答えたい」と思わなければ相手は答えないし、答えたとしても正しい答え、正直な答えを言っているかはわからない。
そして、1on1やコーチングの正しいやり方を学んだとしても、当然ながら、いきなり信頼関係が増すわけではない。今ある信頼関係が現在地。それを受け入れて、信頼関係の土台を厚くしていく必要がある。

そして、関わりが変われば、相手は様子を見るし、相手の変化が本物であるかを試す。

様子見

やり方や考え方が変わるというのは、多かれ少なかれ、誰にとってもストレスを伴うものとなる。新しいやり方はどのようなものなのか、新しいやり方にどのように順応すればいいのか、どのように対応することが正解なのかなど、違うやり方や環境になると、人は様子をみるところから始める。

試す

様子見だけではなく、試すこともする。その変化が本物なのか。時として、その変化は本物ではないことを証明するような投げかけもする。
わざと挑発するようなことをいって、相手の反応を見たり、わざと沈黙を続け(意見を言わず)、本当に自分の言葉を待ってくれているのかを試したり。

その挑発に乗り、過去のやり方に戻ってしまえば、相手は、「ほらやっぱり」「信頼できない」という判断を下す。
変化が受け入れられていくプロセスにおいては、決意の強さと忍耐が必要となる。

ローマは一日にしてならず

1on1ミーティングの重要性に気づき、自分の関わり方を変えて相手を援助したとしても、すぐに変化や結果として現れるかと言えば、それは違う。以下のような要素は、定着・構築されるまでに時間が掛かる。

信頼関係

これは前述のとおり、今ある信頼関係が、今まで作り上げてきた信頼関係であることを受け入れなければならない。そして、信頼関係がすでにあれば、1on1ミーティングは即日効果を発揮するし、それがあまりないと感じているのであれば、信頼関係を築くプロセスに、それなりに時間が掛かる。そうとう傷ついていれば、残念ながら修復は不可能かもしれないし、修復が可能だったとしても、少なくとも半年以上はかかる。関わりによって傷ついた相手は、その傷を忘れないし、「もう無用に傷つけられない」と心から信じることができるためには、やはり「心の治癒」の時間が必要だ。

コーチングスキル・技術の習得

コーチングスキルをしっかりと身につけるためには、実践・経験が必要。コーチングはコミュニケーションのスキルである。これまでやってきた当たり前のコミュニケーションではなく、違うパターンのコミュニケーションを使っていくこととなる。
利き手で使っていた箸を、逆の手で使うようなもの。慣れるのに時間が掛かるし、元の利き手と同じように使いこなすには、それなりの時間が掛かる。

人は元のやり方に戻りたくもなる。「やっぱり右手の方が楽だ…」と。それは当たり前である。だから、人は知らず知らずのうちに元に戻していく。
必要なことなのであれば、できるようになるまで鍛錬を続ける必要がある。

考える力が鍛えられる時間

考えること。それを元に行動すること。1on1の対象が、その新しい流れに慣れるのも時間がかかる。そしてとりわけ、「考える力」というのは、筋トレが必要になってくる。それが機能し始めることも時間が掛かる。

言うべきことは言う

そうは言っても、受け身で何でも聴いていればいいという話ではない。ただの気持ちいい関係は、馴れ合いをもたらす。相手がパフォーマンスを最大化し、望む成果を手にしていくためには、ニコニコ気持ちよく話を受け入れていればいいのではなく、時に厳しい関わりが必要となる。
もちろん、こちらが言うべきこと、言いたいことを率直に伝えたときに、相手がそれを聴き入れたり、きついことを言われても、「自分のことを思って言ってくれている」という肯定的な受け止め方をするためには、やはり、基本的な信頼関係を築いていることが前提となってくる。

まとめ

お伝えしたいことはただひとつ。この仕組みをつくって、それが形に現れてくるのには、それなりの時間が必要。成果を焦り、これは役に立たないと決めつけ、諦めてしまうことが、1on1ミーティングを機能する組織文化を育てる上で、阻害要因になることがたくさんある。

特に組織のトップは、時間がかかるが重要なことに意識を向けて、結果的に楽に成果が生まれる流れを築いてほしいと思う。

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