コーチングの研修をやると、こんな反応が時々ある。

「コーチングの有用性はよくわかりました。うちの部下のなかで、どうやっても無理なやつがいるんです。そういう場合ってどうしたらいいですか?」

コーチはあきらめない

コーチがあきらめて時点で終了。もう希望はなくなる。スポーツでも同じ。伴走しているコーチがあきらめているのに、「コーチできますよ!」って言える選手はいない。コーチの状態が選手の状態に大きく影響をする。選手が諦めていても、コーチは決して諦めない。
選手はさまざまな出来事によって、壁にぶち当たる体験をしたり、挫折しそうになったりする。そんな時、ひとりの力では立ち直ることができなかったり、立ち直るのに余計に時間が掛かったりするが、自分を信じてくれるコーチの存在によって、光を見出すことができる。

よく不良やヤンキーが更生していくドラマやドキュメンタリーがある。あれがすべてではないと思うが、大抵は、不良・ヤンキーのちからを信じて関わり続ける先生がいたり、大人がいたりするわけだ。

あれも、大人があきらめたら終わり。

自分が源という考え方

相手が変わらない。相手を指差して、「相手にどのように問題があるのか」という理由を並べているうちは何も変わらない。人間関係に問題があるときは、もちろん、大抵の場合は双方に課題がある。そして、その場合多くの人は、「相手が変わるべきだ」という考え方に囚われる。つまり、「私は正しい」とか「私はやるべきことをやっている」「自分は悪くない」という会話を同時に持っている。
実際にそれは状況的に正しいのかもしれない。相手にその要因の多くがあり、相手に改善すべき点が多くある。

しかし、「相手が変わるべき」「自分は変わる必要がない」という論理は、何の変化ももたらさない。おそらく相手も同じように思っている。

というわけで、変化をもたらすためには、「自分のどのような要因で今の状況をつくっているか」と、自分を基準に物事を捉えられるかであるし、「自分が自分自身のあり方や言動をどのように変容させれば、この問題ある状況に変化を起こし、望ましい状態を手にすることができるか」と考えられるか。

変化をもたらす考え方は、実はこれしかない。

やるべきことは全部試した

「いろいろやったんですよ。良くするために」という反応もよくある。「私は努力している」ということだが…。
「で、何やったの?」って聴くと、大抵3つくらいしか出てこない。「自分はやった」と証明したいし、自分を変えて動き続けるのは面倒なので、どうしてもブレーキが掛かる。

本当に変えたいのであれば、いろいろな方法を考えて有効と思われるものから次々と試していくこと。これが大事。

信頼は熱しにくく冷めやすい

「信頼は熱しにくく冷めやすい」。実際には、熱しやすく冷めやすいものもあれば、熱しやすく冷めにくいものもある。熱しにくかったからこそ、冷めにくいものもある。

しかし、持つべき意識として「熱しにくく冷めにくい」と思っておいたほうがいい。すでに冷え込んでいる信頼関係であれば、そこから熱していくのは至難の技。そしてタイトルのように、「部下にやる気がなくて」という見方で部下を見ている以上、相手からの反応も冷ややかである可能性がある。「上司は自分の話を全然聴いてくれない」「上司は自分のことなんて何もわかってくれない」というように。

そこから、信頼関係をつくっていくためには、前述のように、まず部下を信じ、絶対にいい関係をつくるとコミットメントし、相手を知るところから始めなければならない。

私たちは一側面しか知らない

人と接していて、相手のことが見えるのは、ほんのひとつの側面だ。しかし、その見えている側面を、まるでその人の全てかのように人は判断する。

しかし、会話をしていると、相手の意外ですばらしい一面に気づいたり、運が良ければ、思わぬ共通点があったりする。しかし、そういう側面は見ることなく、決めつけからアンテナを立てない。これはなんとも、もったいないことだ。

興味・関心・好奇心〜相手の世界を根気よく知る〜

違う側面に触れるためには、相手の中で自分にはまだ見えていない世界に興味関心好奇心を向けることだ。「私は相手の何を知らないんだろう」「私は相手の何を知る必要があるんだろう」純粋な関心は、相手の心を開いていく。それが、3日後なのか、1年後なのかは、誰にもわからない。本物の関心は「愛」だ。根気よく関心を持ち続けて、氷が溶けるまで関わり続けることができるか。自分自身の愛と根気が試される。

まとめ

本日は、関係がうまくいかない部下とどのように接するのかのひとつのアイデアを示した。人は「どうやれば」に意識が向くが、「どうやるか」の前に自分の「あり方」を見つめる必要がある。自分のものの見方や考え方。自分のスタンス。自分自身の意識や姿勢。

どんなに素晴らしい技術を持っていたり、やり方を知っていても、自分の考え方がすべての言動を崩す。

「自分が超えられない壁は自分の前には現れない」と言ったりもする。また、「やり残した宿題は、後々、より大きな壁となって現れる」なんて言われたりもする。

うまく行かない事象や人間関係に出会ったら、「この壁を越えろ!」というメッセージとして受け取り、あとは「どう越えるか」にどんどん工夫を凝らしていく。こうして人は成長していって、対応の幅が広がってくる。