目次
2019年流行語大賞「ONE TEAM」
言わずども知れているが、2020年の流行語大賞は「ONE TEAM」。チームコーチングというひとつの有効な道具を使いつつ、組織を支援している私からすれば、最高の流行語大賞。これに乗らない手はない…。
2019年はラグビー日本代表の年だった。ラグビーワールドカップの開催期間中、あるいはその前後は、日本中がラグビー熱に湧いた。
ONE TEAMの要素
明確な目的・ビジョン・目標・戦略
目標
「史上初のベスト8(またはグループリーグ突破)」これが明確な目標であった。まずは目標を掲げ、選手、監督以下スタッフ全員がコミットしていることが必要。目標は掲げて終わることが少なくない。コミットメントという言葉は、当たり前に使われるようにもなってきたが、これはかなり強い本気の決意・約束のことを言う。
目的
目的はいろいろと考えられる。目標がそのまま目的になることもあるのだが…。
「ラグビーを日本におけるメジャーなスポーツにする」
「ラグビーを盛り上げる」
「世界トップレベルに肩を並べる」
「日本国民に勇気を与える」
「家族に恩返しをする」
など
より重要な目的に心をひとつにしていく。
ビジョン
ビジョンというのは、目指す状態。映像。人にモチベーションを与えてくれる。これをやるとこういう望ましい状態を手にできるという未来像。
適切な戦略
どのように目標に進むのかの道筋が一致していること。
ラグビー日本代表で言えば…。
今回ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが取った戦略の一つで、かつラグビー日本代表にとって重要だった戦略のひとつは、「オフロードパス」であろう。タックルされて倒れ込みながら、パスを回して前線に運ぶ戦略。倒れ込みながらのパスは不安定で、ボールを奪われるリスクが高い。高いフィジカル能力と状況判断が必要。前ヘッドコーチであるエディ・ジョーンズの時代では、取り入れられなかった戦略。しかし、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、さらなる飛躍のために必要と判断。チーム一番となって、この戦略が可能となる準備をしていった。いわばハイリスク・ハイリターンの戦略であると言える。しかし、並外れたトレーニングとチームワークによって、そのリスクを軽減していったとも言えるだろう。
本気・ハードワーク
この目標に本気で取り組むということは、天地ほどあったフィジカルのレベルと技術、それに伴う戦略・戦術的なレベルの差を埋めなければならないということ。同時に、「世界と戦える」という意識への変革が必要であった。
フィジカルのハードワークは、世に知れたこと。選手は口を揃えて「犠牲を払った」という。この「犠牲」の意味は、「やりたいことを我慢してきた」ということと、「精神的にキツイことに耐えた」ということもある。
ちょっとした筋トレも私にとってはキツイ。腕立て30回でもキツイ。そんな私からは想像もできないほどのトレーニングに取り組んでいる。
そのトレーニングのためには、当然ながら時間が取られる。
たくさんの「犠牲」、私の言葉で言えば「代償」を払い、価値をつくりだしてきた。「世界で自分たち以上にトレーニングしているチームはない」
この自負が、世界と戦える意識と肉体を創った。
適切な役割分担
成長のために新しい役割を与えることもある。長期的なチーム作りをするためには、そういったことも必要。ただし、本気で勝ちに行く、成果をつくりに行くのであれば、各役割に最も得意な人を担ってもらったほうがいい。これが適材適所。
適材適所の人員配置をやるためには、人を知っている必要がある。
相互信頼
仲間を信頼していなければ、「スクラム組めない」「ボールを渡せない」。その人がフィールドに入った時点で、チームのパフォーマンスが揺らぐ。
信頼するのは勇気がいること。「相手が自分を信頼してくれるから相手を信頼する」のではなく、「相手がどうであっても私はあなた(あるいはチーム)を信頼する」という強さが必要だ。
ラグビー日本代表とビジネスチームの相違点
「スポーツの世界でしょ?ビジネスの世界は関係ない」
というふうには一概にいえない。「チームづくり」の要素としては、むしろ同じものはたくさんある。
日本代表のラグビーチームと違うのは、「人選」ができるかどうか。ビジネスチームは、必要な役割に適材適所が、ラグビー日本代表に比べれば極めて難しいといえるのは間違いない。組織のリーダーは、多くの場合、決められたメンバー(限られたリソース)の中で、チームを構成していく必要がある。
チームコーチングとONETEAM
チームコーチングはONETEAMをつくる上で非常に優れた道具であり乗り物であると言える。
チームコーチングには5つの基本原則というものがある。
①任務を与える
より大きな組織から、そのチームのミッション・使命が与えられるということ。このチームの責任や役割は何か、このチームが存在する理由は何かということ。
②明らかにする
チーム内部で以下のことを明らかにしていく。また、これらを自分ごとにしていくプロセスでもある。
「主要な目的」「ビジョン」「目標」「戦略」「役割」「ルール」「行動プラン」ということを、内部の対話により腑に落としていく。
ONE TEAMの枠組みをつくる。
③共創する
②で明確にした事柄を実践に移す。チームで成果をつくるプロセスである。戦略・戦術・行動プランの徹底的な実践。
この中でチームの関わりは強化されていく。それぞれの役割を徹底して実践し、時に互いにフィードバックを与え、チームのパフォーマンスを最大化していく。
④つなぐ
チーム外部の重要な利害関係者とつながるということ。チームのミッションの実現は、チームのメンバーだけで実現することはほとんどない。実現・達成のために、チーム外部の利害関係者とよく繋がり、共創の範囲を拡げていくということ。
⑤コアラーニング
このすべてのプロセスにおいて、内省と学習をしていく。個人としても組織としても成長を遂げていく。
今日のまとめ
チームコーチングは、上記の5つの基本原則プロセスを歩んでいく。そのなかで、ラグビー日本代表が強いチームを創っていったのと同じように、チームの枠組みを明確にし、そのプロセスにおいてチームを強化していくための関わりを続けていく。
ONE TEAMの形成プロセスにコーチングは欠かすことができない。
ラグビー日本代表にはジェイミー・ジョセフがいたように、ビジネスチームを機能させ、成果を最大化していくために、コーチがいることは非常に合理的なことだ。