コーチングの基礎を扱う研修を、年間20回くらいやっている。おすすめは2日だが、ビジネスマンは忙しいので、1日でやることが多い。先日行った研修で、
「これって使えるようになるのか?」
という質問を、いただいた。1日の研修の中では、「難しい」という実感を持ってお帰りになる方が多い。

結論から言うと、「使えるようになるし機能する!」「ただしあなた次第」。

コーチング研修1日の流れ

日本全国津々浦々、コーチングに関する研修を提供しているところはたくさんあると思うが、基礎的なカリキュラムにそんなに違いはないだろう。コーチングの基礎を学ぶ際は大抵の場合、以下のような流れになる(はずだ)

コーチング研修(基礎編)の流れ

・コーチングとは何か
・コーチングの活用場面
・コーチの意識やあり方
・コーチングで使用するスキル
・コーチングの流れ

以上がインプットする知識。そして、知識の学習に合わせて演習(ロールプレイ)を実施するという流れ。

コーチングで学ぶ内容は難しくない

コーチングで扱うスキルや流れはそんなに難しいことではない。コーチングで扱う代表的なスキルは以下のとおり。企業に属して何らかの研修に参加していれば(それが仮に新入社員研修であったとしても)、聴いている内容が多いはず。しかし、「知っている」は「やっている」とイコールではないし、「やっている」は「できている」にはならない。

傾聴

傾聴とは何か。傾聴とはどのようにやるのか。うなずいたり、あいづち打ったり、内容をとらえると同時に、話し手が「ちゃんと聴いてくれている」という実感ができるように聴くこと。耳だけで聴かずに体全体を使って聴くこと。

質問

どのように質問をするのが効果的なのか。コーチが聴きたい内容ではなく、本来の目的に沿ってクライアントが自分の思考を明確にしていくには、どのような質問をするのがいいのか。
・オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン
・掘り下げる質問と拡げる質問
・未来質問と過去質問
・ポジティブ質問とネガティブ質問
などがある。

承認

認めること。承認には「存在承認」「行動承認」「結果承認」の3つの要素がある。

存在承認

その人の存在を認めていく。強みや長所、持っている能力などの焦点を当てる。

行動承認

その人の言動を認めていく。頑張ったこと、努力したこと、優れた発言など。

結果承認

つくった結果や成果を認める。実績・業績、プロジェクトの成功など。

フィードバック

コーチが観察したことを、クライアントのパフォーマンス向上のために情報提供する。クライアントの言動がどのようになっているのか。あるいは、クライアントからは見えていない周りの状況がどのようになっているのか。

観察

クライアントや周りの状況を正しく把握するスキル。

コーチングの何が難しいのか

今までのやり方への無意識の愛着

どうしても、今までの自分のやり方は顔を出す。例えば傾聴。まったくうなずかないで話を聴いていた人にとっては、うなずいて聴くだけでも一苦労。今までのやり方がいけないわけでは決してない。しかし、愛着のあるやり方を、人は握りしめる。その握りしめたものを手放し(手を開いて)、他のやり方を受け入れる準備をしなければならない。

答えを持っている

とくに難しいのは、質問に絡めたところだ。コーチングは、管理職になって学びはじめることがおおい。立場的に上位だったり、経験が豊かだったりすると、質問する事柄の答えは、自分の中に持っている。だから、質問の答えをなかなか出せなかったり、自分にとっての正しい答えが返ってこなかったりすると、すぐに答えを与えてしまう。
あるいは、クローズドクエスチョンばかりを使って、会話を進めていく。

コミットの不足

これは意識の話。「コーチングを使いこなせるようになるんだ」という意識や意志を持たないかぎり、使いこなせるようにはならない。元のやり方に戻っていく。

まとめ

コーチングで学ぶひとつひとつは決して難しくない。そして、「コーチング」という引き出しは、管理職が部下の力を引き出すためにも、日常的コミュニケーションにも、間違いなく、とても、役に立つ。

コーチングの知識は、研修を受講したり、本を読んだりすることで習得することができる。しかし、その能力を身に着けたり、体得するためには、実践あるのみ。しばらくはもともとの、自分のコミュニケーションのパターンが、コーチングの習得を妨げる。
「知っていること」→「うまく行かない」
という状態が、個人差はあるもののしばらく続く。
しかしそのうち、
「知っていいること」→「できる・うまくいく」
という体験が増えていく。
コーチングを活かして何を可能にしたいのか。そのビジョンを鮮明に描きながら、「絶対に体得する」というコミットを持ち、日々実践してほしいと願う。