コーチングと当事者意識①はこちら

当事者意識をもってほしいという願いはたくさんあるが、実は当事者意識はほとんど全ての人が持っている。「適切に」当事者意識を持つためには、2つの要素が必要不可欠。
ひとつは、「範囲」
もうひとつは、「目的」

Point1:当事者意識の範囲の認識

当事者意識を持っていない人は時々見るが、あまり見ない。「当事者意識をもっと持ってほしい」という状況において、本質的に問題なのは、必要な範囲が自分ごとになっていないということ。

上記の図を見ていただくとわかるように、会社組織においては、このような範囲の広がりがある。そして、「当事者意識をもっと持って」と言いたくなるのは、「その範囲が狭い」ということである。

自分のことにかまけると組織はうまく行かない

多くの場合、「自分自身」のことについては多くの人が当事者意識を持っている。しかし、自分自身のことも、他の人になんとかしてほしいと願う人も…、もしかしたら少なくないのかもしれない。
組織においては大抵の場合役割があり、自分の責任範囲というものがある。例えば「課長」であれば、自分の担当課に与えられたミッションを遂行し、担当課において望ましい状態をつくることが課長の責任だ。
しかし、課長が自分の課のことだけを考えていては当然うまくいかない。課長であれば少なくとも、ひとつ大きな組織の括りである「部」というものを意識しなければならないし、そのより大きな組織において、自分の課がどのように機能する必要があるのか、他の課とどのような連携をとっていく必要があるのか、当然ながら、部全体の何らかの問題や課題に関心を向け、問題提起をしたり、よりうまくいくための意見や提言をすることが求められる。

会社の規模にもよるが、実際のところは、課長クラスになれば、会社全体のことについても、当事者意識を広げていなければならない感じもするが…。

Point2:当事者意識につながる「目的」

「表面的に」ではなく、本質的に当事者意識を持ち、日々のパフォーマンスをしていくためには、その言動の「目的」が必要だ。この日々の行動は、あるいは今している自分の仕事は、自分にとって価値のある何に繋がっているのか。

自分の目的とつなげていくことを「意味づけ」という。
当事者意識を持ち、高いパフォーマンスを発揮している人はこの「意味づけ」が非常にうまい。この仕事は自分にとってどのように価値があるのか。ある意味、自分を説得し、納得させて突き動かす材料を集める。

楽しい仕事に就くか、今の仕事を楽しいと思うか

よくこんな話を耳にする。前者であれば幸せだ。「楽しい」「好きだ」「まるで天職」と思える仕事に就けるに越したことはない。でもこんな仕事に出会える人はどのくらいいるのだろうか。こういう仕事について、長く働いている人もいるだろう。同時に、「絶対そうだ」と思って入った会社がしばらくすると、「ちょっと違った」などと感じる人もきっとたくさんいる。「楽しい」と思える仕事に出会い、それが長く継続されれば、相当ラッキーかもしれない。

今の仕事が楽しくない理由はたくさん見つかる。見つけなくても見つかる。その理由は日々の中で強化され、どんどん仕事にモチベートされない理由になっていく。
しかし、当事者意識を持ち、仕事に取り組んでいる人は、逆を生きる。当然ながら楽しくない理由はやってくる。仕事はさまざまな葛藤の連続。人間関係はうまくいかなかったり、商品やサービスは売れなかったり、理不尽なことを言われたりするものだ。
その中でも、「楽しい理由」を探す。もちろん「楽しい」というだけではなく、「仕事の価値」「この仕事をする上でのビジョン」「お客さんの笑顔」など、つなげていく。
そもそも、今の仕事に楽しい理由を見つけられない人は、隣の芝が青く見えて他の会社に移ったとしても、同じように、だんだんとつまらない理由がたくさんやってきて、また隣の芝が青く見えるようになってくる。楽しい理由を探せる人は、どこに行っても楽しい理由を探すことができる。

当事者意識を膨らめるコーチング

さて、部下や社員の当事者意識を膨らめるのは、本人の仕事なのだが、それをサポートすることはできる。そして、多くの場合はそのサポートが必要だ。

当事者意識をもたせるための「期待範囲の定義」

やらなければならない一つは、何を期待しているかを伝えること。どの範囲を守備範囲としてほしいのかを伝えることだ。1回伝えて終わっていたり、何を受け取ったかを確認もせずに「伝えているつもり」になっていたり、「わかっているだろう」という感じで、相手に任せてしまっていたり。責任範囲を明確にするということを、実はたくさんの人がやっていない。それをやってもいないのに「当事者意識をもっていない」と愚痴を言う人は多いが、まさに自分自身が当事者意識欠如状態になっていることに気づいてすらいなかったりもする。

「自分のことはもちろんやってほしいが、チームがうまく回っていくように意識を向けて関わってほしい」と伝えること

意識を向けてほしい範囲の「目標」を明示すること。

範囲の方向性を示し、相手の意見を聴くこと

など

当事者意識をもたせるための「意味付けの支援」

している仕事にどのような意味をもたせるか。人は、目の前の仕事に没頭すればするほどに、周りが見えなくなる。それは、周りの人の仕事であったりとか、チームや部課の状況もそうだが、同時に、自分の仕事の行き先も見失う。自分はどこに向っているのか。何のためにやっているのか。よくわからなくなってしまう。

だからこそ、上司の関わりとして、視点を上げる問いかけや投げかけが必要となる。

「この仕事はどんな意味や価値があるだろうか」
「私達の目標は何に繋がっているか」
「この仕事をやり遂げたら、どんな成長をしていると思うか」
「この仕事をやり遂げたら、次はどのような仕事をしてみたいか」
「チームの仲間の支援をすることは何につながるか」

答えを待つ忍耐と根気

上記のような質問を投げかけても、スピード感を持ってあるいはスムーズに答えを出すことは難しいことがほとんど。今まで考えたことないようなことであればなおさら。
しかし、質問を投げる立場としては、大抵の場合、自分の正しい答えをもっていたり、こう答えるべき、答えるだろうと、相手の答えを想像していたりする。
だから、答えが出ないと、こちらから答えを与えてしまったり、諦めたり呆れたりする。しかし、筋トレと同じように、頭の思考回路が鍛えられていくためには、回数が必要だし、時間が必要だ。根気よく質問を投げ、どのような答えも受け入れる姿勢が、相手の思考回路を鍛え、本物の当事者意識を育てていく上で欠かせない。

まとめ

「当事者意識をもたないのは、そのもたない本人のせい」として放置するのではなく、部下や社員が当事者意識を持つための上司からのアプローチを適切にする必要がある。

どのようにしたら、部下が当事者意識を適切に持てるか。質問を投げかけ、よく傾聴し、相手の考えを認めていくこと。コーチングの活用が、部下の当事者意識を強めていく強力な支援になることは間違いない。

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