NLPと出会い、学び始めてから8年が経つ。メタモデル質問の「名詞化」については、「やっぱりようわからん」という声を聴くし、私も迷うことがあったので、改めて名詞化について自分なりにまとめてみようということ。

NLPのメタモデル質問について

世界の認知

人は世界を五感で受け取る。視覚、聴覚、身体感覚、嗅覚、味覚。優先感覚と言って、人によって優先的に働かせている(無意識だが…)感覚はあるが、いずれにせよ、それぞれの感覚で世界を捉える。捉えられた世界は、映像、音声、言葉などで記憶されることになる。これはまとめて体験・経験となり、その積み重ねが、ものの見方や考え方、人の価値観などを創り上げる。

世界から地図へ

捉えた世界はすべての事柄が記憶として留められるわけではない。あるいは、すべてを言語化するわけではない。人は感性のフィルターを持っている。あるいは人それぞれ、掛けている眼鏡が違う。人間が世界を地図に変えたように、人それぞれ、ある意味自分に都合のいいように、世界を作りかえる。

地図はいろいろな種類があるが、道路地図であれば地図には道路が描写される。しかし、アスファルトなのか土なのか、砂利なのか、その描写は正確にはされず、地図作成において都合のいい描写に置き換えられる。また、道の両脇にある草木などは完全に削除される。線路はJRであれば白と黒の線で描写されるわけだが、実際にあんな線路はない。

土地が地図に置き換えられるのと同じように、人の頭は自分にとって都合のいい地図に変換するフィルターを持っている。このフィルターは、物事を削除し、歪曲し、一般化する。

地図を表現するためには未熟な言葉

その地図を表現する際には、絵を描いたり、声を使って表現もされるが、多くの場合に「言葉」ば用いられる。当然ながら、その表現には、削除、歪曲、一般化が起きる。自分が捉えた世界をすべて言葉で表現するには、「言葉」というのはあまりにも未熟な道具である。

メタモデル質問

メタモデル質問は「削除、歪曲、一般化」された土地を、できる限り正確に再現していくための質問だ。そして、時に、クライアントに発見・気づきを与える、有力な武器だ。明らかに本人にとって都合のいいように捻じ曲げられてしまったもともとの世界を回復してくれる。

NLPにおける名詞化とは

「名詞化」とは、本来動きやプロセスのあるものを「名詞」として扱う、あるいは「名詞」に変換してしまうもの。「名詞」はその特性上、固定化されたイメージになる。
平たく言えば、名詞化により強力な「決めつけ」となる、本人の中ではそれを変容されることが難しくなる。

名詞とは

「名詞」を広辞苑(第6版)で調べると、
「(noun)品詞のひとつ。事物を表す語。文中で主語や目的などとして働く。数詞・代名詞を含むこともある」
と定義されている。

名詞は世の中にありふれているが、例えば、「りんご」「電車」「かばん」「椅子」などがある。名詞を言えば、事物を特定することができる。

名詞は不十分

じゃあ、「『りんご』を思い浮かべてください」と言われたら、みなさんは何を思い浮かべるだろうか。多くの人は、赤いあの実を思い浮かべるだろう。でも人生で青りんごしか見たことのない人は「青りんご」を思い浮かべるし、人生で果物のりんごに出会ったことはないけれど、パソコンに精通している人がいたとしたら、appleのロゴを思い浮かべたりするかもしれない。

「椅子」ならどうか。日頃自分が座っている椅子が出てくるかもしれない。マッサージチェア、ロッキングチェア、人によってはベンチ。

名詞をポンと出されたときに、全員が同じものを共有できるかというと、それは難しい。その人それぞれによって定義されている、代表的なものが出てくる。

NLPの名詞化とは

名詞化というのは、本来名詞でないものが名詞に変換されるもの。ここでは、通常プロセスがあるものが、名詞に変わる。そして短い単語になることで、そのイメージがに固められてしまうもの。
名詞化は必ず「プロセス」が存在し、より具体的な「状態」がある。名詞化によって固定化されたこのイメージを、解きほぐしていくことが、名詞化に対するメタモデル質問の役割だ。

名詞化の問題

名詞化というのは、本来プロセスや動きがあるものが変換され、「名詞」つまり固定化された「モノ」として扱われることで、イメージそのものが固定化され、あたかも変容させることが難しいものとして認識してしまう。あるいはその「名詞」にまつわる自分なりの解釈で、人や事柄に対する見方や考え方を固定化させてしまう。

名詞化のほんの一例

成功、教育、意図、方法、コントロール、我慢、解決、未熟、嫌味、確執、暴走、理解、不満、感謝、約束、責任、爆発、怒り、失望、マネジメント、評価、判断、提案、幸せ、努力、険悪、不機嫌、意地悪、不足、恐れ、育成、…

さらに挙げれば山ほどあるわけで、意識を向けて聴いていると、人が何か会話している中にも、たくさん名詞化されたものが登場する。

メタモデル質問の「名詞化」は「歪曲」

前述のとおり、「単語」から受ける人のイメージは様々。伝えられた言葉は、その人のフィルター(※)で形が変わる。その人にとっての勝手な解釈。そして時に、解釈は連鎖をする。そうすると、真実とは到底かけ離れたイメージをもったり、それを固定したりする。
「名詞化」は「名詞」であり、そのイメージはどのようにも解釈できる。その単語から共通の認識が生まれるわけではなく、人によって解釈が異なる。つまり、捉える人によって、解釈が歪められる。

教育とは

先日大学で講演をした際に、「教育」って何ですか?って大学教授に聴いてみた。
「教育」って何すること?
「教育」において大事にしていることは?
「教育」で成し遂げたいことは?

「教育」というのは統一されたひとつの単語だ。そして、上記の質問に、全員が同じように答えるだろうか?
決してそんなことはない。というよりも、同じように答えている人を探すほうが難しい。つまり、同じ単語であっても、そこには人によって違うプロセスや考え方があるということだ。そのプロセスが削除されて、短い単語に。これを復活させていくことが、メタモデル質問の役割となる。

あの人意地悪なんです…。

「あの人」=「意地悪」

このように、人のアイデンティティとして、名詞で特徴づけをする。こうやって名詞で貼られたラベルはなかなか強烈。「意地悪」な人として接するし、「意地悪」な人として、他の人にも紹介する。

「意地悪」を広辞苑で調べると…

人が嫌がる仕打ちをわざとすること。また、その人。

名詞化のメタモデル質問例

メタモデル質問は、プロセスを回復する。あるいは状態を具体的にする。

彼は意地悪だ

「意地悪な人」というのが、時にすべてのアイデンティティとして固定化されるので、これを解きほぐしていく。

「どんな場面で?」「何をされる?」「何を言われる?」「誰に対して?」「どのように言われるの?」
というような質問を組み合わせる。

→場面を特定することで、「常にでない」「そうでない場合もある」ということに気づく可能性。

→されていることを話していくことで、「そんなに意地悪じゃないかも」ということに気づく可能性。

→人によっては違うということで、そうである時とそうでない時があると気づく可能性や、もしかしたら自分にも要因があるかもと気づく可能性

と、本人が決めつけていて動かなくなっているものに動きを与えていく。

私は未熟だ。

「何がどのように未熟なのでしょうか」

「熟した状態とはどのような状態でしょうか」
「熟すためには何が必要ですか?」

彼の暴走を止められない。
彼は何をするのですか?言うのですか?
どんな場面で起こりますか?
誰に対してやりますか?

従業員は不満を持っている。

従業員の方は何を言っていますか?
何に対してどのように言っていますか?

まとめ

名詞化によって、人が決めつけられたり、未来が決めつけられたり、何かをあきらめたり…。決めつけや思い込み、信念や観念。英語で表現すると「Berief」。私たちが生きていく上で必要なものもたくさんある。同時に、決めつけは、自分に制限を加える。言動への制限。言動が制限されることで、成果が制限される。目標の達成を阻む。人とつくれるはずの素晴らしい関係性がつくれない。
相手がどのような言葉で自分を制限しているのか。これにコーチ(プラクティショナー)が気づき、適切な質問を投げることを通じて、クライアントが自分で気づき、適切な選択をしていくサポートとなる。

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