前回のブログでは、
育成や指導にあたる際必要な、
ティーチングとコーチングについてお伝えした。

前回のブログ(読んでいない方は是非こちらから↓)

効率的な育成にはティーチングとコーチングの両方が必要です!

今回はその使い分け。
ティーチングとコーチングは、
どのように使い分けたら良いのか。

コーチングの研修を実施していると、
良く訊かれる質問です。

適切に使い分けられると、
相手のモチベーションを維持、向上させながら、
育成に臨むことができます。

こんな方におすすめ

  • 自分がマネジャーや指導員などの役割を担っている
  • コーチングについて正しい知識を知りたい
  • 自分の指導法に課題を感じている
  • 思うように人が育たないと感じている

この記事を読んでわかること

  • 相手の現状を理解する
  • 成長段階に応じたティーチングとコーチングの使い分け

優れた指導者はティーチングとコーチングを使い分ける

結論から言うと、
相手の成長の初期段階においては、
かならずティーチングが必要。

そして、
相手が成長するにつれて、
ティーチングすべきことは、
(一般的に)減っていくはずで、
相手の知識/技術や経験の向上に応じて、
コーチングの頻度を高めていく

成長段階に合わせてティーチングとコーチングを組み合わせる

成長段階に合わせた育成指導を考える際、
以下の書籍の内容を基にするのが考えやすいので、
一部資料を抜粋して紹介する。

※ケン・ブランチャード著「一分間リーダーシップ」(ダイヤモンド)
を参考に図を作成。

D1〜D4までで関わり方を変える。
ちなみにDというのは”Development(発達)”の略。

D1は成長の初期段階。
D4は成長の成熟段階ということになる。

D1段階は「基本ティーチング(コーチングは少なめ)」

D1というのは、いわば依存状態。
「依存」というのはあまりいい状態とはされないが、
どうしても依存状態という時期は存在する。

大事なことは、
この「依存状態」の成長段階を、
いかに早く抜けていくかということ。

D1における相手の状態

※ちなみにこの「状態」に関しては、
あくまでも一般的に考えられることであり、
この限りではないという前提で御覧ください。

D1というのは、
新しい仕事に臨む状態であり、
「ワクワク感」や「希望」を伴いやすい。

そのため、
意欲はわりと高い状態にあることが多い。

同時に、
当然ながら知識や能力レベルは低い状態にある。

D1の相手への関わり方

守破離という言葉があるが、
まさにこの「守」の段階と言えよう。

※守破離はこちら↓

守破離(wikipedia)

正しい「型」をしっかり覚えていく段階。

意欲は高く、知識や能力レベルは低いので、
ティーチングに軸足を置いて関わる必要がある。

正しい知識とやり方を示し、
示されたやり方を忠実に実行に移し、
「仕事ができた」
「結果をつくれた」
という実感を積み上げていく必要がある。

この段階に対してコーチングをしても、
自分なりの考えを持てるほど、
まだ知識や経験が備わっていなかったり、
考え方がわからないという状態であったりする。

D2段階は「ティーチング&コーチング」

D2というのは、依存から自立への過渡期。
依存から脱皮していく過程と言っていい。

D2における相手の状態

D2は、能力や経験が徐々に身についている段階ではあるが、
能力はまだ低い状態にある。

また、意欲が下がっている可能性がある。

意欲が減退する理由はいくつか考えられるが、
主には以下のとおり。

  • 仕事に飽きる
  • 現実と理想のギャップ
  • 能力の低さに嫌気がさす

D2の相手への関わり方

能力は未だ低く、
意欲が下がっている可能性があるこの段階。

※ちなみに、
意欲が高かったとしても、
基本的な関わりは同じでOK。

引き続き、
基本を習得するための「型」は、
しっかりと守るためのティーチングはしつつ、
知識や経験がついてきているので、
自分なりの考えも持つ段階に来ている。

必要なことを教えながら、
相手の考えを聴いて尊重する。

つまり、
ティーチングとコーチングが、
まさにミックスされる感じとなる。

本人の考えを引き出しながら、
わかっていることやうまく行きそうなことについては承認しつつ、
不足している考え方や知識などは、
ティーチングで補っていくという関わりが、
この段階での基本的な関わりになるだろう。

D3段階では「コーチングときどきティーチング」

D3は「自立」状態。

D3における相手の状態

D3というのは、
そのタスクや業務に関する知識も技術も十分に身につき、
「自立した」と言える状態。
つまり、筋肉がついて、
基本的なことは自分でできるようになった段階と言っていい。

知識や能力、その業務に関する経験は、
十分にある状態。

意欲についてはさまざま。
自分の力だけでつくった実績がまだ不十分であるため、
自信が持ちきれない段階でもある。

自分でやらなければならない責任も相まって、
不安が強くなったりする段階でもある。

D3の相手への関わり方

というわけで、
引き続き後押しが必要な次期。

コーチングがベースとなる。
基本的には相手のアイデアを引き出す。

それで行けそうならば、
承認して力づけて出す。

必要に応じて、
指導者側のアイデアを追加提案(ティーチング)する。

D4段階はときどきコーチング

D4というのは「委任」状態。

基本的には任せておける。

D4における相手の状態

能力や経験も十分に備わり高い状態。
また、自分で実績をつくった結果、自信も備わり、
意欲も安定している。

自分の考えと、新たな知識を自ら掴み、融合させたり、

他のカテゴリと協働したりしながら、
新たな価値を生み出すこともできる。

D4の相手への関わり方

この相手に対しては、
ティーチングすることはほとんどなくなり、
コーチングを時々すればいいだろう。

注意すべきは、
「ほったらかし」にしないこと。

D4段階の2つの懸念

成長段階が上がり、
委任状態になっていくと、
2つの懸念が考えられる。

ひとつは「自分のやり方」

力を付けてくると、
自分のやり方に自信が湧いてくる。
すると、
自分なりの方向づけをしたくなる。

結果、
組織の方向性とズレが生じていく可能性がある。

もうひとつは、
立場が上がった故の「不安」「葛藤」

立場が上がれば上がるほど、
下す決断は大きくなっていく。

そして、
相談できる相手も少なくなっていく。

責任は大きくなるけど、
誰にも相談できない。

こんな状況。

時に、
「それで大丈夫」
って太鼓判を押してもらいたくもなる。

というわけで、
関わり方に戻るが、
どれだけ能力があがり委任状態になったとしても、
「コーチング」の機会は、
必ず残しておいた方がいい。

話し相手が必要だ。

タスクごとに存在する成長段階

そして、
今回紹介している「成長段階」というのは、
人そのものの成長段階ではない。

AさんはD1。
BさんはD4。

ということではないということ。

AさんのタスクaはD1。
AさんのタスクbはD4。

これが正解。

営業でトップセールスマンとなり、
誰もがD4だと思っていても、
経理の担当になったらD1になるかもしれない。

何かの製造ラインで、
誰もが認めるD4だったとしても、
別の製造ラインに移ったらD2かもしれない。

何かの分野で極めると、
自分も周りも、
「この人はできる人」
と大枠で括り、
別の仕事もできるだろうという「イメージ」を持ってしまう。

しかし、
その見方はその人の新しい分野やタスクでの成長を遅らせるし、
その人の過度な心理的負担となっていく。

人そのもののイメージに対する成長段階の把握ではなく、
相手のタスクに応じた成長段階を見極め、
そのタスクごとに必要な支援をすることが重要。

優れたプレーヤーが、いきなり優れたマネジャーになれないのも同じ話。
マネジャーへの転身は、
新たな学習が必要となる。

子どもにもティーチングとコーチング

今も私がパソコンをパチパチしている最中、
隣では小学校2年生の息子が、
漢字練習や冬休みの宿題をしている。

算数は大の得意。
でも国語(特に漢字)が少々苦手。

算数の問題は、
プリントを出しておけば、
自分でスラスラやってしまう。

だからD4。

国語は、
漢字の書き順もよく間違えるし、

めんどくさくなる。
だからD2。

基本、見守りながら、
間違えたところをティーチング。

そして重要なのは、
できたところをしっかり承認。

「できたなぁ…」

「よく頑張った!」

こうやって力をつけていく。

ちゃんと考えてやればできる。
でも適当にすませてしまう。

時間の使い方が苦手。
ついつい楽しいことを優先してしまう。

それを叱る。
叱るとモチベーションが大抵の場合下がる。

でも時間の使い方がわからないのなら、
時間の使い方や、
計画の立て方を、
教えてあげる必要がある。

というわけで、
今日は時間の使い方を、
一緒に考えていきました。

そうしたら、
やるべきこと(冬休みの宿題など)と、
やりたいこと(ゲームなど)が、
非常にスムーズに実行。

気分のいい休日になったようです。

今日のまとめ

というわけで、
本日はティーチングコーチング
2つの育成の手段を、
どのように使い分けるか紹介しました。

一般的には、
ティーチングに偏った育成になります。

一旦、軸足を思いっきりコーチングに移してみませんか?
そうすると、
自分の関わりの幅も増えるし、
部下の成長のスピードや、
モチベーションにも変化が見られるはず…。

関連記事

効率的な育成にはティーチングとコーチングの両方が必要です!

相手の主体的な行動を最大限引き出す「コーチング」とは

一流のコーチは技術だけではない!コーチングを成功に導く5つのあり方

コーチングや1on1の組織への導入をお考えの場合は是非ご相談ください

LBJ問い合わせフォームはこちら

(Visited 974 times, 1 visits today)