2020年6月9日の日経新聞に、
内閣支持率の世論調査の結果が出ていた。

内閣支持率38%

これが、過去最低タイとのこと…。

ひとつの指標としてはもちろん参考になるのだが、
この手の調査にはひとつの怖さもある。

ちなみに、予め言っておくけれど、
このブログで政治的なメッセージを発するつもりは全くない。

あくまでもビジネスシーンで使えるなにかに、
メッセージは置き換えていく。

世論調査は電話調査

世論調査は、
「電話調査」という手法が使われ、
基本的にはランダムに選ばれた、
統計上必要数分の世帯に、電話をかける。

らしい…。

(自分が世論調査を受けたことがない)

というわけで参考サイトはこちら↓(NHK選挙WEB5月の調査結果)
https://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/

世論調査はすべてクローズドクエスチョン

サイトは他にもいろいろ見たが、
質問は主にクローズド・クエスチョン。

  • 「安倍内閣を支持しますか?」
  • 「支持政党はどこですか?」
    ※オープンクエスチョンにも見えるが、
    選択肢が限られているのでクローズド・クエスチョン扱い。
  • 「新型コロナウィルスの感染拡大で生活にどの程度不安を感じるか」
  • 「新型コロナをめぐる政府の対応について」
  • 「緊急事態宣言解除の評価について」

など

これらはすべて、
Yes/Noまたは択一式で答える必要がある、
クローズドクエスチョン。

クローズドクエスチョンのメリット

クローズドクエスチョンのメリットは、
主に以下のとおり。

  • 答えるのが容易(に見える・感じる)
  • 答えるのに時間が掛からない
  • 沈黙の時間が短く済む
  • 大まかな方向性を確認することが可能
  • 相手の意志や決意を確認することが可能

世論調査は時間をかけられない

世論調査は5分程度の電話で行われる。
そのため、回答に時間をかけるわけにはいかない。

世論調査に答えるか否かは、
あくまでも電話の相手に任せられるわけで、
答える人は当然ボランティア。

時間を掛けるわけにはいかない。
この前提は重要だ。

「正確さ」よりも「簡便さ」が、
どちらかというと重視されている。

クローズドクエスチョンのデメリット

クローズドクエスチョンのデメリットは、
メリットの反対なので、言うまでもないかもしれないが…。

  • 相手の意思が正確に表現されない
  • 行間を読みづらい
  • 答えを容易に誘導できる

これを内閣支持率の質問で見てみよう

内閣支持率の質問

「安倍内閣を支持しますか?」

  • 支持する (37)
  • 支持しない (45)
  • わからない・無回答 (18)

調査結果に出てきている答えの選択肢

支持するのか、
支持しないのか、
「さあ、どっち?」

って聴いている。

「どちらとも言えないなぁ…」

という人は、わからない・無回答に入っているのだろう。

しかし、きっと、
「支持する」と答えた人の中にも、
「どちらとも言えないけど、どっちかと言えば支持?」
という人も含まれるし、逆に、
「支持しない」と答えた人の中にも、
同様な雰囲気の人が含まれるだろう。

また、
「支持する」の中には、
ある一部の政策や、
首相の発言・振る舞いは支持するけれど、

この一面は支持していない。

というようなこともある。

しかし、クローズドクエスチョンというのは、
結果として、
そういったものも全部含めて、
限られた選択肢の中に押し込めてしまう。

内閣支持・不支持の理由

「内閣を支持する理由は?」

  • 他の内閣より良さそうだから(55%)
  • 支持する政党の内閣だから(14%)

「内閣を支持しない理由は?」

  • 人柄が信頼できないから(36%)
  • 政策に期待が持てないから(26%)

こちらの質問は、
どのようにしたのかわからない。

考えられるのは2つ。
選択肢を用意して、
そのうち当てはまる理由を答えてもらうか、
「その(支持・不支持の)理由は?」

と訊ねて、
近い回答を括ったか。

いずれにしても、
正確な考えや意見というのは、
反映しづらいものとなる。

また、例えば、
「人柄が信頼できない」
とこたえているのが36%ということは、
64%は、
「信頼できない」とは思っていないか、
「信頼できる」と思っているか、
というようにも読み取れる。

クローズドクエスチョンの結果は鵜呑みにできない

というわけで、
クローズドクエスチョンを投げて得られた回答は、
何かの参考にはなるが、
それが全てかのように鵜呑みにするのは非常に危険。

その質問と回答のやりとりでは、
汲み取ることができていない真意が必ずある。

職場でやりがちなクローズドクエスチョンのオンパレード

「ねえ、やる気あんの?」
「早く帰りたいとか思ってんでしょ?」
「今の仕事好き?」
「仕事ってそんな甘いもんじゃないって解ってる?」
「ちゃんとやってる?」
「サボってない?」

相手が「はい」しか言えないような質問を投げて、
その「はい」を否定するようなやりとりがされることも、
「上司」「部下」の間では非常に多かったりする。

「やる気が出ない理由を次のうちから選んで」

  1. 仕事がつまらない
  2. 家庭がうまくいっていない
  3. お客さんとの関係がうまくつくれない
  4. 上司が苦手だ

当然ながら4って言えない…。
しかも、妥当な選択肢がないかもしれない。
でも、「どれでもないです」って言えない…。

こうやって、部下は心理的に追い詰められていく。

こうやってコツコツと、
部下はメンタルダウンに陥っていったりもする。

「上司」の中に答えがすでにあって、
「部下」に言わせる。
つまり、
そんな気はないにしても、
いつの間にか相手を誘導してしまっている。

クローズドクエスチョンに要注意

上司は、
何らかの事柄に答えを持ちながら、
部下に質問する時、
クローズドクエスチョンになりやすい。

そうすると必然的に、
部下に対する回答の選択肢を狭めていることになる。

圧力はいろいろな面で働く。
質問そのもの。
表情。
姿勢や態度。
声・口調。

総合的に、
相手の自由回答を奪っていく。

オープンクエスチョンに慣れよう

無意識のコミュニケーションでは、
クローズドクエスチョンが出やすい。

だからオープンクエスチョンを心がけよう。

質問の仕方も、態度もオープンに。

オープンクエスチョンのやり方

オープンクエスチョンは簡単。
疑問詞を使うだけ。

5W2H

Why:「なぜ」と目的や理由を訊く
Who:「誰?」と主語や対象を訊ねる
When:「いつ?」と期限や期間を訊ねる
Where:「どこで?」と場所や場面を訊ねる
What:「何を」と具体的な内容や意見を訊ねる
How:「どのように?」と方法や気分などを訊ねる
How many(much):「どのくらい?」と量を訊ねる

オープンクエスチョンにすると、
回答に時間が掛かる。

つまり沈黙が増える。

オープンクエスチョンというのは、
考える人にとってもストレスだ。

選択肢が与えられていないので、
自分で1から考えなければならないし、
説明も、自分で論理構成する必要がある。

だけど、
それが真実を引き出すには必要だし、
そして、「考える」トレーニングにもなる。

オープンクエスチョンの心構え

自分の答えとは違う答えが返ってくるかもしれない。
というか、たいていそうだ。

どんな答えが返ってきても、
まずはキャッチすること。
打ち返さないこと。

「なるほど、それが君の考えね」
「たしかに、そういう考えもあるね」

と受け取る。

「でもさ、〜」
と、いきなり打ち返さない。

顔をひきつらせない。
貧乏ゆすりしない。
これ、全部打ち返すリアクション。

気をつけて…。

きょうのまとめ

クローズドクエスチョンは、
時として真実を歪めてしまう。
印象を誘導することも容易だ。

それも、
大手のマスコミがやっているのであれば、
大衆は鵜呑みにしてしまい、
その後の行動も決める。

情報は操作される。
この側面を、
情報を受け取る人は知っていなければならない。

表に出てきた情報と、
その裏側に存在する表現されていないこと。

共に働く同僚であればなおさら、
このへんのやりとりは、
しっかりとしていきたいものだ。

それによって、
信頼関係の深さが変わってくる。

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