目次
前回のブログの続きです。
前回は、
【コーチングスキル1:傾聴①】「この人はわかってくれる」を創る
ということでお伝えしたわけですが、
「沈黙」は非常に重要なエッセンスであり、
また、課題と感じる人が多くいらっしゃるため、
こちらでしっかりとお伝えしていきます。
前回のブログはこちらから↓
【コーチングスキル編1 :傾聴①】「この人はわかってくれる」を創る
こんな方におすすめ
- 自分がマネジャーや指導員などの役割を担っている
- コーチングについて正しい知識を知りたい
- コーチングや1on1をやっているがうまくいかない
- 自分の指導法に課題を感じている
- 思うように部下/メンバーが育たないと感じている
- ビジネスシーンでコーチングを使いこなしたい
- 組織にコーチングや1on1を導入したい
この記事を読んでわかること
- コーチング・傾聴における「沈黙」の効果
- 沈黙するときの相手の状態4パターン
- コーチングで沈黙が起きた時にやりがちなこと
- 沈黙へのたったひとつの対処法
コーチングでは沈黙が考える力と主体性を育てる
正確に言うと、
沈黙だけではないですが、
考える力と主体性を育む上で、
「沈黙」というのは、
非常に大きな役割を果たします。
コーチングと考える力
- コーチが質問する
↓ - 相手が考える
↓ - 相手が質問の答えを出す
↓ - コーチがその答えを受けとる
↓ - 必要に応じて承認やフィードバックをする
↓ - さらに質問する
↓ - 考える
…
といった繰り返しです。
答えを教えてもらうのではなく、
自分で考える。
自分なりの答えを出してみる。
これは正直言って、
少し苦しいプロセスです。
でもそれを重ねていくと、
考える力が育ちます。
脳みその筋肉が太くなる感じですね。
答えを教えてもらってばっかり、
受け身指示待ちの人は、
この筋肉が細いんです。
だから、
考える力をつけさせるために、
コーチングを活用します。
「考える」時間は、
どうしても「沈黙」になります。
質問によっては、
かなり長い沈黙になることもあります。
この沈黙に耐えられないと、
相手の考える力は身につきません。
コーチングは2種類の主体性を鍛える
「考える主体」は自分
主に、
トップダウンによる上司の指示で動いていたり、
親切丁寧に上司が答えをくれていたりと、
自分で考える必要のない環境に、
あまりにも長くいると、
自分で考える必要がなくなってきます。
考える主体が、
他人にあると、
自分の脳みそが強く思い込み、
そこから抜けられなくなるわけです。
コーチングによって、
本人に考え尽くさせる。
安易に答えを与えないことで、
「自分で考えた」
という実績をたくさんつくり、
「考えること」に対する自信を付けさせる。
そしてそのためには、
コーチも相手も、
「沈黙」を突破していく必要があります。
相手が答えを出せると信じて、
沈黙でしっかりと「考えさせる」ことで、
「考える主体」を手にすることができます。
「行動の主体」は自分
これは、
「考える主体」とつながっているわけですが、
自分で考えて、
自分で答えを出して、
自分で決断したことは、
行動も必然的に「主体的」になる。
上司が決めて、
上司に「やらされた」のであれば、
主体は上司になる。
しかし、
自分で決めて行動したのなら、
当然「自分の責任」になる。
うまくいったら自分のおかげ。
失敗したら自分で尻拭い。
うまくいってもうまくかなくても、
振り返りにおける学びは大きい。
コーチングにおける沈黙のパターンは4種類
コーチングで沈黙が起きるときは、
主に以下の4パターンが考えられます。
パターン1:答えが出ない/わからない
考えても答えが出ないというパターン。
知識が十分になかったり、
経験が浅かったり、
あるいは、
「上司にとって正しい答えを探さなければ」
と正解探しをしていたりすると、
なかなか答えは出てこない。
パターン2:まとまらない
いろいろと考えが巡って、
整理がつかないとかまとまらないという状態。
ロジカルに鍛えられているビジネスマンは、
「まとめなければ発言してはいけない」
と思っていたりする。
「結論言って根拠3つ」
など、
正しい形にならなければ、
頭の中でぐるぐると考え続ける傾向があったりする。
パターン3:考えているフリ
これもありがち。あまえんぼパターン。
「黙っていれば答えを教えてくれる」
という、
ある意味戦略的な沈黙。
この手に乗っかって、
優しい上司は、
ヒントや答えを与えてしまう。
これは相手の思うツボ。
パターン4:別のこと考えている
質問は、
時として迷宮に入り込ませる。
勝手に連想ゲームが始まって、
まったく別のことを考えていたりする。
沈黙が起きたときやってしまいがちなこと4つ
質問を変えてしまう
「ちょっと質問がわかりづらかったかな…」
と勝手に判断し、
(良かれと思って)質問の角度を変えてしまったり、
まったく別の質問を投げてしまったりする。
答えやヒントを与えてしまう
「ちょっと難しかったかな」
と勝手に判断し、
せっかく考えているのに、
答えを与えてしまったりする。
質問している上司は、
質問しながら自分なりの答えを持っているので、
それを言いたくなる欲求が働く。
苛立って怒る
あまりあってほしくない状態だが…、
「こんなこともわからないのか?」
って批判めいたメッセージとともに、
相手を蹴落とす。
これでthe end.
安易なクローズドクエスチョン
「答え出ない?」
って訊いてしまう。
そうするとほぼ100%、
「はい」
って返ってくる。
沈黙が長いと感じたときのたったひとつの対処法
そうは言っても、
「沈黙長いな」
と思ったら、
そして、
その沈黙をコーチが破ることを決めたのなら、
こうやって訊けばいい。
「今、どんな状態?」
※「今、どんなこと考えている?」
と、
必ずオープンクエスチョンで訊ねる。
そうすると、
先ほど挙げた4パターンの、
どれかに近い答えが返ってくると思われる。
その答えが返ってきて初めて、
次の手を繰り出せば良いのです。
沈黙パターンごとの対処
パターン1への対処:「答えが出ない」
これはいくつかの方法が考えられます。
パターン1-1:延長戦
「じゃあ、もう少し考えてみよう」
とその場でさらに考えることを促す。
その際、
「少なくとも5つくらいのアイデアを出してみようか」
と、
具体的な数字を伝えると、
絞り出される可能性がある。
またその際、
目の前にいて沈黙が気まずいのであれば、
時間を与えてその場を離れてもOK。
パターン1-2:宿題/持ち帰り
その場は打ち切り、宿題にする。
あくまでも自分で考えさせる。
そして、
改めて場を設定し、
相手が考えてきた答えを聴く機会をつくる。
メールなどでもいいかもしれないが、
考えて答えを出したことに対する承認は、
しっかりしたほうがいい。
パターン1-3:答えやヒントを与える
「ちょっと自分で考えるのは難しかったかな」
と判断した場合は、
答えを与えるのも一つの手段。
ただし、
相手の知識や経験から考えて、
自分でアイデアを出さなければいけないような、
成長段階に入っているのであれば、
安易に答えを与えるのは避けたほうがいい。
パターン2への対処「まとまらない」
「まとまらない」
という状態なので、
まとめなければいいわけです。
「まとめなくていいから、
浮かんでいること、考えていることを、
片っ端から全部教えて」
と伝える。
人は、
頭の中でぐるぐる考えている段階では
整理がつかないものも、
言葉にしてみると、
意外と整理がついたりするものだ。
仮に、
整理がつかなかったとしても、
頭の中からその場に考えが並ぶことにより、
コーチは次の質問をすることができる。
コーチと対話・キャッチボールをしているうちに、
整理がつくかもしれない。
パターン3への対処「考えているフリ」
「今どんな状態?」
って訊ねて、
「考えているフリしてました」
って答える太い部下は、
あまりいないと思うので、
おそらく、
「わかりません」「答え出ません」
って返ってくるはず。
その際に、
「考えてないな」
ってコーチが察知したとしたら、
関わりのスタンスや、
育成の方針を改めて伝える必要があるかもしれない。
例えば、
「これまでは、アイデアややり方を積極的に教えてきたし、
指示を出すという関わりが多かった。
でもこれまでいろいろ吸収して、
さらに成長していくためには、
少し意識を切り替えて、
自分で考える機会を増やしていく必要があると思う。
私も関わりのスタンスややり方を変えるから、
君も今までとは意識を変えて取り組んでほしい」
という感じ。
丁寧に説明をすることによって、
相手は自分の置かれている状況や立場を理解する。
そうすると、
意識が変わり、言動が変わる可能性がある。
パターン4への対処「別のこと考えている」
この対処はシンプル。
もう一度、まったく同じ質問をすればいい。
質問を変える必要もない。
新たな気持ちで、もう一度。
今日のまとめ
沈黙には「忍耐」が必要です。
特に、
相手の考える力が身につくまでの初期段階においては、
長い時間の沈黙に耐えなければならないかもしれません。
「沈黙=考える力が育つ時間」
これを大切にすることによって、
長期的に見ると、
自立型人材が育つことにつながっていきます。
「沈黙」しているときは、
相手がどんな答えを出してくるのか、
楽しみにしながらじっくり待ちましょう。
「相手は答えを出せる」
信頼が答えを呼び込みます。
関連記事
一流のコーチは技術だけではない!コーチングを成功に導く5つのあり方
コーチングの基本:「ラポール」がなければコーチングできない!?
コーチングの基礎:非言語要素を磨いてコミュニケーション力アップ
【コーチングスキル編1 :傾聴①】「この人はわかってくれる」を創る