「導入当時はどのような組織の背景や課題がありましたか?」

阿部写真館は、徳島を本店とする80年続く老舗の写真館で、私が4代目となります。チームコーチングを導入した時は、出店したばかりの大阪に注力していたため、以前のように徳島にある本店の幹部や社員とコミュニケーションをとる時間が減っていました。「伝えたつもりで伝わっていない」「誤解が生まれてしまう」等のちぐはぐなコミュニケーションになっていました。私がいくらうまく伝えたつもりでも、伝わらない状況に苛立ちもありましたし、幹部メンバーの中にも「分かってもらえない」「伝わらない」という不満や不安が募っていたようです。

「チームコーチングを導入しようと思ったきっかけは?」

先代より一貫して大切にしてきた理念に、「写真を通じて笑顔を届ける」というものがあります。

これは変わらず大事にしてきたことなのですが、時代が変わっても見直さずにいました。理念や今後の方向性についても、幹部や社員と改めて会話をするようなこともありませんでした。幹部メンバーは先代の時から想いをもって働いてくれているスタッフですから、先代の考え方・やり方と、私の考え方・やり方の違いに戸惑っていたということもあったようです。

そのため、私を含めた幹部メンバーのチーム力を、“改めて”ひとつにする必要があると感じていました。そんな時にチームコーチングに出会ったわけです。

もともと弊社では、「社員教育」や「仕組みの整備」には力を入れてきました。私はいいと思うものはどんどん取り入れて組織を活性化させていくことが好きですし、興味もありますから、チームコーチングも当時の弊社の状況からぴったりはまるに違いないと思い導入を決めました。

「チームコーチングはどのようなメンバーや内容で始めた?」

最初の半年は、経営幹部6名で会社の方向性や現状の課題・問題点を洗い出し、目標、戦略を策定しました。各回で具体的な行動プランを決めて実行し、その振り返りをしました。その後メンバーを追加してさらに半年間実施しました。

1年経って、幹部の意識がまとまってきたところで大きく形を変えました。

3つの重要な課題に対して、プロジェクトチームを3チーム結成。これまでチームコーチングには参加してこなかった従業員も全員加えました。「どのチームに入るか」は社員の自主性に任せ、関心のある課題について自ら解決していく流れを創りました。

導入当初には「チームコーチングで何をやっているんだろう?」と疑問に思っていたメンバーもいましたが、全てのメンバーが意欲的に参加して、各プロジェクトを推進した結果、会社全体が活性化していきました。

2年ほど、メンバーや形を変えてチームコーチングを行いました。

ミーティングの様子

それぞれがそれぞれに思っていることを同じテーブルで話し合う。共感と衝突の繰り返しでチームがまとまっていく

「チームコーチングで起きた変化や印象的だったことはなんですか」

ひとつは、理念が明確になり幹部チームがひとつにまとまったことです。会社のミッション、ビジョン、価値観について徹底的に議論し、クレドという形でまとめました。

・会社の社会的使命は何なのか

・どのような状態を会社の外側と内側に創りたいのか

・スタッフが共通して大事にする価値観とは一体何なのか

これらのことについて膝を突き合わせて会話することはありませんでしたからとても新鮮な機会でした。

また、私がこれからどのようなことを大事にしていきたいのか、何を見ているのか、ということなど、自分の話すことがスタッフにしっかり理解されていく実感がありました。

それから、スタッフが日頃どのようなことを考えて仕事しているのか、会社をより良くするために何が必要だと思っているのかなどを知ることができたこともとても大きかったです。

クレドは、私がひとりで決めてトップダウンで下ろしたものではなく、全員で納得しながら決めましたから、社員全員が「この状態を創るんだ」という責任意識と決意が生まれました。

このクレドを決めていくプロセスにも大きな変化がありました。それは全員が自分の正直な意見や思いを表現していたということです。それぞれが思い思いのことを表現しますから、当然ぶつかることもあるわけです。自分の意見を押し付けたくなったり、受け入れたくなかったり、「なんでわかってくれないんだ!」と感情的になったりと、たくさんの葛藤が起きました。しかしこのぶつかり合いこそがチームをひとつにしていく重要な要素のひとつなんだということもよくわかりました。

自分たちの会社を良くするために、自分たちで議論を進める。「全員参加」もチームコーチングの肝のひとつ

そういう意味で、チームコーチの存在は大きかったように思えます。みんな頭を突っ込んで話をしていますから熱くもなります。しかし、客観的に場を見ながら、発言の真意が伝わるようにさらなる説明を促したり、何がわからないのかを明確にするよう質問させたり、何か言いたい様子のメンバーに発言を促したり、時には厳しいフィードバックをしたりと、私たちの議論がうまく進むようにコントロールしてくれました。

組織の中では、意見は言わないけど納得もしていない、だからイヤイヤ従って十分なパフォーマンスを発揮できないということが一般的に起こります。そうではなくて、自分の意見をしっかり言って、相手の意見を受けとって、その言葉の真意を理解して、その中でベストを考えていくというプロセスを何度も何度もチーム全員で歩んだ、というか走り抜いた感じがします。

その結果、社員同士の信頼の度合いが圧倒的に増しました。徹底的に議論をしていますから、お互いの考えていることを理解しあった上でそれぞれの役割を果たしていくわけですね。

大きな方針や方向性は一致しているという信頼がありますから、私も徳島本店のことはあまり口出しせずマネジャーに任せるようになりましたし、その分大阪の事業に注力することができました。徳島が安泰であるというのは私にとって大きな安心感になっていたように思えます。

メンバー同士の信頼感向上が組織成長のエンジンに。学んだノウハウを継続することも欠かせない