本記事のテーマと狙い

ビジネスシーンにおいて、何らかのマネジメントや人の育成を行う立場の方が、コーチングの概念ややり方を理解し、日常的に何らかの要素を使える状態とすること。

記事の信頼性

コーチング歴は15年。

企業や組織において、これまでの100回以上のコーチング研修を実施している。

目次

ビジネスコーチングとは
ティーチングとコーチング
コーチングは誰が誰に対してやるのか
ビジネスコーチングの目的
コーチングの種類
ビジネスコーチングが機能する前提
コーチングと面談と1on1ミーティングの違い
コーチングの効果/メリット
コーチングの組織への導入
コーチの意識・あり方
ビジネスコーチングのスキル
ビジネスコーチングの枠組みづくり
ビジネスコーチングの進め方
ビジネスコーチングの資格を発行しているおすすめの会社
まとめ

コーチングとは

コーチングは、プレーヤー/クライアントが望む成果を手にするために、プレーヤー/クライアント自身が最大限パフォーマンスを発揮することをサポートするプロセスのことである。

コーチングの語源

コーチングは語源をギリシャ語の「Coche(馬車)」とする。現代で言えばタクシー。運転手が連れていきたい場所に連れていくのではなく、客が行きたい場所に最短で到着 できるようサポートするのが馬車やタクシーの役割。同様にコーチングは、プレーヤー(コーチングの対象)が行きたいと願う場所に関心を向け、本人が願っている成果を手にするために、伴走しながら支援していくのがコーチの役割であり、コーチングである。

コーチングはカーナビ

カーナビゲーションシステムに限らず、今ではスマホに入っている地図アプリもすべてそうだが、ナビゲーションシステムは、道案内をすることで、使用者が適切なルートを通って目的地に到着することが、主な役割である。

そしてそのために必ずやることは以下の2つ。

1.ピンポイントで明確に設定された目的地を、ブレずに指し示し続けること。

2.現在地をGPSを通じて、ほぼ寸分違わずに指し示し続けること。

この2つの前提があるから、ナビゲーションは、適切ないくつかの道を探し提案することができる。そして使用者は、その中から最も適切と思われる道を選ぶ。

ナビゲーションはこのことをやり続けてくれるという前提があるので、使用者はナビゲーションを信じて道を進むことができるのである。

そして、ビジネスにおいて、この2つがぼやけていることは非常に多い。

目的地が不明確

まずは目的地。私は、あるいは私たちは、どこに進んでいるのか。いろいろな理由で目的地は曖昧になる。

目的地がぼやける要因

・そもそも設定されない。毎日の仕事を一生懸命ただこなしているだけになっている。

・目標の明確化について、やり方を知らない。

・目標を設定した気になっているが、達成したのかしていないのか、その基準がよくわからない目標が設定されてしまっている。

・目標は設定するものの、目先の仕事にいっぱいいっぱい。毎日の仕事に没頭していて、その先を意識する時間もゆとりもない。

・目標や方向性が形骸化。あるのはわかっているけど、達成してもしなくても特段影響がない。

・目標が大きすぎてモチベーションが働かない。「どうせ無理」って心の中では思っている。

・目標が小さすぎてすぐに達成してしまう。逆の意味で、モチベーションが働かない。

・目標は明確だが、やらされ感いっぱいで、自分の行きたい先になっていない。

など

ぼんやりした目標では、ナビゲーションシステムが全く働かない。

現状が不明確

こちらもいろいろな理由で現状がぼやける。現状がぼやけるというのは、ナビゲーションでいえば、「自分のいる位置が判っていない状態」ということだ。思い出してほしい。何かの目的地があって地図を見るときにまず何をするかと言えば、「目的地を探す」か「現在地を探す」かだ。現在地が判らない状態では、一歩目をどのように踏み出していいか分からない。現在地が正しいということは、目的地に正しく、効率的に到達するために、絶対に知っていなければならない。

現状がぼやける要因

・自分の視点からしか現状を見ない。立場や役割を変えると、同じ現状でも違うものが見えるが、他の視点を持てない/持とうとしない。

・都合のいい現実だけに目を向ける。自分にとって不都合な真実は見ない。

・現状を良く見せたい。誰かへの面目を保つために、現状をごまかす。

・そもそも現状を見るためのやり方を知らない。

・振り返りの時間を作らない。

自分のタスクや役割で一生懸命動いていると、自分がどのような状況に置かれているのかわからなくなることはよくあること。海で波に揉まれるという経験は割と多くの人にあるかなと思いますが、自分が今どのような位置にいるのか、どんな体勢になっているのか、周りには何があるのかなど、全くわからない状況になりますよね。同じように、ビジネスシーンも同じような状況になっている。

ティーチングとコーチング

人を育成・サポートしていくためには、ティーチングとコーチングの両方を相手の成長レベルに応じて使い分けていく必要がある。

ティーチング

人の育成には、「ティーチング」が不可欠だ。ティーチングとは、ここでは、知識や技術を教えること、正しいことを伝えること、やり方や流れについて明確な指示や命令を出すことがティーチングである。

コーチング

一方で人の育成には、コーチングも不可欠。コーチングというのは、ティーチングが指導者から被指導者に対して「答え」を与えていく関わりとすると、コーチングは「質問」を与えていく関わりであると言える。

コーチングは「教える」「指示を与える」のではなく、「傾聴する」「質問する」「承認する」といった関わりを通じて、被指導者自身が、「自分で考え、自分で選択して、自分で決断して、自分で行動して、自分で結果をつくって、その結果に責任を取っていく」というプロセスを支援していく関わりである。

コーチングとティーチングの使い分け

人を育成したり、支援したりするためには、ティーチングとコーチングの2つの道具を使い分けていく必要がある。では、どのように使い分けていくのか。これは非常にシンプル。図1をご覧いただきたい。成長段階に応じてどのようにティーチングとコーチングを使い分けるのかが一目瞭然になっている。横軸がティーチングの度合い。縦軸がコーチングの度合いである。人が何かのタスクに向かう上で、完全に未熟な状態から、成熟した状態に段階を経て成長していく。その成長段階に合わせて指導者としての関わりを変えていく必要がある。

図1

成長初期段階(D1)への対応

D1というのは、成長の初期段階。一般的には、新しい仕事に臨む上で、それなりに意欲が高い状態ではあるが、能力や知識レベルが低い状態であると言える。この相手には、適切な教育が必要で、正しい知識ややり方を教えたり、技術の習得のためにやり方を見せたり研修を受講させたりということが、割合的には多く必要となる。

つまり、この段階の対象者に対しては、ティーチングを集めにして、コーチングが薄めとなる。

成長初〜中期段階(D2)への対応

D2というのは、成長の初期〜中期の段階である。一般的な状態として考えられるのは、うまくやりたいという気持ちがあるが、教えてもらったことがなかなかうまくいかず、覚える こともたくさんあり、また、周りの先輩などと比較しても能力不足は感じてしまうため、意欲は低下する傾向がある。同時に、実際に能力レベルはD1よりは高いものの、それが実体 験として使えているとか役に立っているという実感を得にくいため、自分の成長を感じづらい。作業への慣れも出てくる。したがって、D1のときに比べると能力は若干上がっているものの、意欲レベルは低下傾向にある。

この時期の関わりとしては、引き続き必要なティーチングを施すと同時に、本人に考えややり方について、本人の意見を考えさせたり、その考えを尊重しながらよく聴いたり、その意見に対して、あるいは何らかの行動に対して、承認を与えたりと、コーチングの要素を使う頻度を増やしていくことに意識を向ける必要がある。

言われたことをただやるだけの毎日、あるいはそれさえもうまくやれずに落ち込んでいく、自分の無力さを必要以上に感じてしまうということがあるため、無用に落ち込んでいくことがないよう、適切にコーチングを挟んでいく必要がある。

成長自立段階(D3)への対応

D3というのは、成長の中期〜後期にあたる。一般的な状態として、あるタスクを遂行していくための知識や技術など必要な能力は備わってきており、そのタスクについては任されれ 自分でこなしていくことができる。ティーチングについては、指導者から被指導者に言わなければならないことは減っており、基本的に自分で考えることができる状態なので、あまり必要ない段階に入っている。一方で、力はついてきているが、十分な成功体験に裏付けられる自信があるかというと、それはまだ十分でなく、決断についても誰かの太鼓判がほしい状況だったりもする。

したがってこの段階は、ティーチングの割合が低く、コーチングの割合を高めにして、本人が自分で考えて決断していくまでのプロセスを、そばにいてよく耳を傾けながら、力づけをしていく関わりが主となる。

「自分で決断したことによって成功した」という体験をたくさんつけさせることで、自信を確固たるものにし、主体性を向上させ、当事者意識の幅をより広いものにしていくことが可能。

成長委任状態(D4)への対応

D4は成長の後期。つまり、成熟状態、委任状態にあたり、そのタスクに関することは本人に任せておけば大丈夫という状態になる。 当然ながら、ティーチングの度合いは下がり、本人の考えや意見を尊重していくことになる。一方でD3と比較すると、コーチングの頻度も下げて問題ない。ただし、このレベルに達しても、コーチングの機会はゼロにしないほうがいい。どんなに立場が上がっても、ひとりでは整理しきれないこともある。人と会話することを通じて頭が整理されたり、アイデア が広がったり、何かのひらめきが生まれたりする。会社のトップ(社長)であっても、誰かと話をすることで、肩の荷がおりたり、気持ちが楽になったり、革新的なアイデアが生まれてくることがある。対話の機会はそのような効果をもたらす。

コーチングで個人も組織も成長する

上記の流れを適切に支援することを通じて、効果的かつ効率的な成長が起こる。D4に達すれば、被指導者は自分自身で仕事をやれるレベルも範囲も増えている。 一方で指導者の負担も減っている。ずっとティーチングしているのは、指導者にとっては大 きな負担となる。その負担が、被指導者の成長によって軽減していく。そのため、手の空いた指導者は次の誰かを育てることや、自分自身がよりレベルの高い、あるいは影響範囲の広い何かの仕事にチャレンジすることが可能になる。

これが組織全体に起きていくことによって、よりレベルの高い人財が多く育ち、会社としてもレベルアップしていくことになる。

コーチングは誰が誰に対してやるのか

これは正しい答えがない。「ビジネスコーチング」という括りで言うと、一般的には、上司が部下にコーチング。先輩が後輩をコーチング。とこんな形が多く見られるケースであるかとは思う。上司から見れば、「面談」という機会があるだろうし、メンター制度などで若手を育成していく仕組みを創っている組織は、先輩が後輩に対して1対1で関わる機会が多いだろう。そのプロセスにおいては、コーチングが非常に役に立つ。

しかし、ビジネスコーチングというのはそもそも範囲が広い。「ビジネスシーンにおけるコーチング」がビジネス・コーチングの定義であるから、ビジネスの場においてはいろいろな関係性においてコーチングする/されるの関係が生まれていくことになる。

コーチ:コーチングする人

コーチイー:コーチングされる人

コーチ→コーチイー

上司→部下

先輩→後輩

同僚同士

異なる会社/組織の社員同士

部下→上司

後輩→先輩

社員→協力会社(取引先)

人事部→各部署の社員

社内コーチ→社員

外部コーチ→社長や幹部社員

外部コーチ→一般社員

など

何が正しいという形はなく、ビジネスシーンでありえるコーチングはすべてビジネス コーチングと呼んでいい。私の友人は、当時上場企業の課長であった時代に、副社長から声を掛けられた。「コーチングを学んでいるらしいな。私のコーチングを月に1回やってくれ」ということで、課長がコーチ、副社長がコーチイーの関係で、2年ほど続いたらしい。

また、こんなケースもある。社内コーチが数十人存在している。直属の部下をコーチングするのではなく、コーチングの対象は「はじめまして」のどこかの部署の社員。コーチはその部署の知識や経験がないため、自分の意見や正しさを握りしめる必要もないし、自分の意見を押し付けることもない。また、そのため、コーチイーは「自分で考えなければならない」という意識が前提となる。直接的な利害関係やがないので(最初の信頼関係をつくるにはそれなりに時間がかかることもあるが)、業務上必要なことについて、なんでも言える関係をつくりやすい。

コーチングは何かの役職的・立場的関係においてのみ起こるものではなく、形としては割と自由なものであるということを認識しておく必要がある。

コーチングと相性

コーチングする上で、すべての人に対して同じように対応できることがもちろん望ましいことではあるが、コーチングにはどうしても「相性」というものは存在する。

例えば…、

・女性にしか心を開くことができない

・50歳くらいのこの手のタイプの男性はどうしても前の上司を思い出してしまい、苦手意識がある。

・同世代の人には本音を言うことができない

スキルや能力でカバーできる部分はもちろんあるし、コーチングのスキルは、相手が話しやすかったり、心を開きやすい状況をつくるためにも、適切に使っていくものだ。

しかし、理屈を越えたところで、心が抵抗を示すことは当然ある。相性が理由で、コーチングが適切に機能しないのであれば、コーチを変えるというのは一つの有効な手段であると言える。

そして、どういう関係であったとしても、コーチングが適切に機能するためには、重要な前提があるが、これは後述する。

ビジネスコーチングの目的

ビジネスコーチングの目的は、一言で言ってしまえば、

「ビジネスマンあるいはビジネスに携わる組織が望む成果や結果を、可能な限り早いタイミングで、可能な限り最大化した状態で手にすること」

である。

そしてそのために、コーチがその成果をつくるプロセスで、手取り足取りではなく、ビジネスマン(プレーヤー)自身が、そのパフォーマンスを最大化して臨んでいくことが、コーチングの目的であり、コーチの役割となる。

そのための小さな目的はいろいろと存在する。

・目的地や目標を定義すること

・問題が解決された状態を定義すること。

・現状を明らかにすること

・やり方のアイデアをいろいろと出すこと

・対象者を力づけること

・行動プランを具体的に決めること

・本人がPDCAサイクルをしっかり回すこと

・対象者の具体的な成長

など

コーチングの種類

とりあえず、世の中に存在する○○コーチングと名のつくものを並べてみる。

・パーソナルコーチング
・ビジネスコーチング
・エグゼクティブコーチング
・キャリアコーチング
・ライフコーチング
・スポーツ(アスリート)コーチング
・チームコーチング
・1on1コーチング
・メンタルコーチング
・NLPコーチング など

いろいろ呼び方はあるが、同じように解釈できるものもいくつかある。コーチングは、カウンセリングと違い、国家資格ではなく、さまざまな民間企業によって定義され提供されているので、いろいろな考え方や解釈、やり方があるという前提である。

提供する会社や組織によって定義が異なるが、私が必要と思うものを下記のように整理し説明していく。

パーソナル/ライフコーチング

個人のことについて扱うコーチング。その人の人生全般の課題を扱っていく。家庭、仕事、職場、趣味、人間関係、財産、健康、自己成長、など、扱うテーマはさまざま。

ビジネス・コーチング

ビジネスにおける成果を明確にしたり、パフォーマンスを向上したり、職場の課題を解決したりと、ビジネスシーンにおけることが、主なテーマとなる。

パフォーマンスコーチング パフォーマンスを最大化するためのコーチング。パフォーマンス(performance)という言 葉は、「演奏」「遂行」「実行」「仕事の成績・出来栄え」という意味を持つ。 つまり、「成果や目標達成」を「どのように実行するのか」ということに焦点を当てなが ら、確実に達成されていくように「PDCAサイクル」を回していくサポートをするのがパ フォーマンスコーチングである。すべてのコーチングの種類に、この考え方は当てはまるも のでもある。

エグゼクティブ・コーチング

会社組織における上位の意思決定権を持っている経営幹部や組織のトップ(エグゼクティブ)に対して行うコーチングが「エグゼクティブコーチング」である。エグゼクティブの意思や考え、ゴールなどを明確にし、時に組織の枠組みに関するテーマも扱いながら、自分の扱う組織全体やトップ個人としての成果を効果的に創り上げていくために行うコーチング。

キャリア・コーチング

人生全体や、自分の仕事のキャリアを意識しながら、その望むキャリアを積み上げていくためのコーチング。あるいはそのキャリアそのものをイメージしていくものでもある。同時に、今の仕事や状態がどのように自分の望むキャリアにつながっていくのかをイメージし、今の仕事ややっていることにモチベーションをかけていくものでもある。

スポーツ(アスリート)・コーチング

アスリートが望む成果を達成していくためのコーチング。専門的な知識も必要だが、なくてもコーチングは可能。

1on1コーチング

上記すべてのことをまとめて1on1コーチングと言える。

メンタル・コーチング

メンタル面について、望ましい状態を創っていくものが、メンタルコーチングと呼ばれている。意欲・モチベーションを望ましい状態にすること。自分の今の行動に意味付けをして、前向きに取り組める状態をつくることなど、精神的な状態を整えるために行われる。

NLP・コーチング コーチングにおいて、NLPのエッセンスを使うのがNLPコーチングと呼ばれている。誤解を恐れずに言えば、意図しているかどうかは別として、NLPのエッセンスは多くのコーチングにおいて使われている。

チームコーチング

個人ではなく、組織やチーム単位でコーチングを行うことを、チームコーチングという。個人以上に、組織の意思を統合していくことは難しい。自分たちが何を望み、現状としてどこにいるのか。組織内外のコミュニケーションを支援することを通じて、組織の一体感や成果を創り出していく。

ビジネスコーチングが機能する前提

コーチングが機能するためには、この前提を外すことができない。それは「信頼関係」であり、コーチングの世界では、「ラポール」と呼ばれる。呼び方はどちらでも構わないが、こ こでは「ラポール」で統一していく。

ラポールが取れている状態

ラポールが取れている(形成できている)状態というのは、例えば以下のような状態である。

・この人は何でも話を聴いてくれる。受け止めてくれる。
・この人に対しては、どのようなことを言っても大丈夫。
・この人の質問に対しては誠実に答えよう。
・この人の実績や経験は素晴らしい。
・この人の言動は一貫性がある。
・この人の発言には必ず耳を傾けよう。

コーチングを阻害する要因

コーチングにおいては(詳しくは後述するが)、望ましい状態を明確にし、現状を明らかにして、そのGAPを埋めていくというプロセスを歩む。しかしこれらを明らかにするプロセスにおいて、

・隠し事
・嘘
・ごまかし
・何かのフリをする

といった、望む状態にしても現状にしても、それをずらしてしまうような発言はまったくうまくいかない。

コーチングと面談と1on1ミーティングの違い

「コーチングと1on1ミーティングと面談って何が違うんですか?」という質問を、最近よく受ける。
結論から言うと、1on1ミーティングと面談は特にない。言葉が違うので、人によってはイメージが違うだろう。また、組織として「意味づけ」によって、この言葉に違いをもたらしてるということはあるだろう。

1on1ミーティングは、その名のとおり、1対1のミーティング。
面談は辞書によると、『面談:あって直接話すこと。(広辞苑第6版より)』

なので、これが1対1であれば、1on1ミーティングの解釈と一緒と言える。

面談の頻度と時間

そもそも面談をどのような形や頻度でやるかということを問いかけると、「半期に一度15分」というのが、私が接してきた組織の中で非常に多い回答といえる。そしてこれは、会社の仕組みとして設定されているからであり、自分で必要性を感じて、面談や1on1の機会を設ける人は、多くて2割程度だろうか。

面談に対するマイナスのイメージ

面談に対する多くのビジネスマンのイメージはあまりいいものではない。限られた面談の機会は、半期の業績評価、人事考課を伝えられるだけで、被面接者が口を開く時間はほとんどないというケースも多い。上司が話している言葉に対して、何度か「はい」という返事を繰り返し、最後に「何かある?」って訊かれて、「特にないです」って面談を終了していくというようなケースもたくさんありそうだ。

面談に対するイメージを訊いてみると、

・上司が説教して終わる
・上司の自慢話を聴く場所
・上司が愚痴を言うことに終始する。
・失敗を責められる。
・業績を責められる。
・新しい仕事を振られる
・何か言っても否定される。
・自分の話は聴いてもらえない。
・きつい目標を与えられる場所。

もちろん中には、「上司はしっかり自分の話を聴いてくれて、結果だけでなくプロセスも認めてくれて、面談は力づきます。楽しみです」という人もいるが、稀だ。

多くの場合、面談に対しては、

「面倒」「できれば避けたい」「別の仕事をしていたい」

といった負のイメージがある。

名前を変えても…

仮に1on1ミーティングと名前を変えても、その中身が同じであれば何の違いもない。 つまり、「1on1ミーティング」にしても、「面談」にしても、枠組みや中身、あるいは関わり方によって、「質の高い」時間にもなるし、「質の低い」時間にもなる。

そして面談において、「質の低い」傾向になるものは、ティーチングの時間が長い。つまり、上司(コーチ)が喋っている時間が圧倒的に長く、部下(コーチイー)が話している時間があまりにも短い。

コーチングを面談や1on1で効果的に使う

コーチングは、1on1や面談の中で使う技術・道具のことであり、前述したとおり、場面に応じて使い分けていく必要がある。とりわけ、面談の中でコーチングを適切に用いることが できるかどうかが、面談や1on1ミーティングの質をあげていくポイントとなる。

というわけで、 「1on1ミーティングと面談の違いは?」 →同じ

「コーチングとの違いは?」 →コーチングは、1on1ミーティングや面談、あるいは日常的に使っていく、コミュニケーションを効果的にするための道具である。

コーチングの効果/メリット

コーチングを正しく使うことで、さまざまな効果が考えられる。

・主体性が生まれる
・モチベーション高く仕事に臨める
・考える力がつく
・決断力が身につく
・自信が湧いてくる
・成長のスピードが早まる
・仲間との相乗的な成果が得られる
・リーダーシップを積極的に発揮する
・不満や愚痴が鬱積せず発散される
・組織へのロイヤリティが高まる
・仕事にやりがいを感じる
・信頼関係が高まる/深まる

コーチングのプロセスにより生まれる主体性

改めてお伝えするが、コーチングというのは、自分で「考えて」「選んで」「決めて」「行動して」「結果をつくって」「責任をとる」というプロセスの支援である。

一方のティーチングは、極端に考えると、上記のプロセスの大半を上司がやってくれるということだ。つまり、「考えて」「選んで」「決める」のは上司。

「行動して」「結果をつくる」のが部下の役割。

「責任を取る」のは、「決断を下したのは自分」という自覚の強い上司であれば上司が取るが、部下にその責任を押し付ける人もいる。

コーチングの組織への導入

ビジネスコーチングの組織への導入については、大きく2つのパターンがある。

1.外部コーチの招聘(特定の誰かにビジネスコーチングを実施)
2.社内のコーチングの文化を醸成する

外部コーチの招聘

これは外部コーチと契約をした上で、特定の役員または社員を定期的にコーチングするというもの。

これは難しいことはなく、「いいかも」と思ったビジネスコーチと契約をして、やり方を決めてコーチングを実施してもらえばいい。

社内のコーチング文化を醸成する

社員がコーチングを使えるようになることであり、それが社内に広がっていくこ と。例えば、役員やマネジャーがコーチングを自在に使える状態となり、部下に対して効果 的なコーチング(面談)を実施できる状態をつくっていくということ。

最近(2019年6月現在)では、この流れがより活発になってきている。 そして、この形で導入する上では、さらに重要な2つの要素がある。

1.コーチング技術の習得

コーチング技術の習得については、全社的な共通言語をつくるために、全社共通の研修などを通じて、コーチングを学ぶ必要がある。 コーチングの研修を提供している会社はさまざまで、コースや内容もたくさんある。 マネジメントで使うコーチングの基礎的な研修としては、1日で実施しているところが多い が、2日間程度やることが望ましい。そうすると、知識をしっかりつけた上で、ロールプレイなどの演習を通じて落とし込みがそれなりにできる。

さらに、日常的な実践を振り返るフォローアップの機会があると、さらに効果的だ。これがないと、どうしても研修の内容は日を追うごとに風化していく。

2.コーチング技術の定期的な実践

そして、何より、日常的な実践つまり「使うこと」が重要だ。 やってみてわかることがある。道具は使えば使うほど、自分のものになっていく。なんでもそうだ。そして、そのためには、仕組みを変えなければならない。 強制的にでも、コーチングを実践する機会をつくる。それまでは、半期に一度、15分程度の面接だったものを、月に1度は部下と30分の面談の時間をつくり、コーチングを実践する。 もっと言えば、半期ごとに組織目標を基に落とし込んだ個人の目標を明確に設定した上で、

「目標設定のコーチング」

「中間フォローのコーチング」

「振り返りのコーチング」

といった形で定期的に実践していく仕組みをつくることが望ましい。マネジャー本人の裁量に任せると、本人の内的要因(気持ちや能力など)や外的要因(業務の忙しさや部下の反発など)によって結局仕組みをつくれずに終わってしまったりする。

したがって、組織のコミットが必要だ。有無を言わさず、仕組みと機会をつくり、研修で学んだことを試す場所がある。

コーチング文化の醸成

そして、コーチングが流暢に使えるようになるには、早くても1年の時間が必要だ。組織にはそれを待てる度量と忍耐が必要となるが、文化や風土が創られてくると、その風土で育った人財は、スムーズにその下に同じことができるようになっていく。

導入の段階では正直なところ、カネと時間と労力と忍耐が必要だ。これに腹をくくって、新しい文化をつくることにコミットできるか。組織の決意が試されるところ。

ビジネスコーチング導入の流れ

ビジネスコーチングを組織に導入する際は、一般的に以下のような流れとなる。

1.ファーストコンタクト

2.状況ヒアリング(コーチとの相性判断)

・コーチングに望むこと
・コーチングでつくりたい成果
・コーチに望むこと
・疑問点の解消 など

3.契約

・契約期間と回数
・各回の時間
・実施場所
・金額

などを決定する。

4.ビジネスコーチングの実施

単発での実施は多くの場合オススメしない。 作り出したい成果にもよるが、少なくとも3ヶ月。 基本的には、半年単位でのコーチングの更新をオススメする。

少し長めの期間で、創り出す成果を明確にした上で、達成するための動きをつくる。

5.振り返りコーチングを実施

契約の終了時に、期間全体の振り返りのコーチングを実施する。 どのような目標に対し、どのような成果を創ったのかを明確にする。 また、そのプロセスにおいて、何をしたのか/しなかったのか。

何がうまくいったのか/いかなかったのか。
どのような成長を遂げたのか。
積み残した課題は何か。
などを明確にして、期間を終える。

契約の更新がある場合は、次の期間で創る成果の設定を行う。

コーチの意識・あり方

「意識・あり方」というのは、ここでは、ものの見方や考え方、その人の価値観や信念などのことをいう。

コーチングを機能させるために、「やり方・テクニック」は非常に重要だが、その前に、 コーチの意識を整える必要性についてお伝えしておきたい。どんなに優れた知識や技術を持っていたとしても、そのコーチの意識が腐っていたら、スキルは機能しない。

例えばそのコーチが、

「こいつは何をやったってうまくいかないんだよな」
というふうに諦めていたり、

「こいつは頑固だから、自分のやり方を変えない人だよな」
というような負の決めつけを持っていたり、

「私の考えの方が絶対に優れている」
と相手の意見や考えを認めない考え方を持っていたり、

など、相手との間に否定的な関係性が生まれるような意識、すなわち、ものの見方や考え方、価値観、信念や観念などを持ちながら関わっているとしたら、どうしてもうまくいかない。

したがって、コーチとして関わる上では、コーチングの知識や技術を向上していくと同時に、自分自身のあり方や意識の部分も磨いていくことが必要になってくる。

コーチの意識「関・信・認・任」

コーチとして関わる上では、特にこの漢字4文字を意識して関わっていくと良い。

ちなみに、の3文字は、パナソニック創業者である松下幸之助さんが、部下と関わる際、あるいは育成をする際に大事にしていた漢字3文字と言われている。

それに「関」を足した4文字。

関心

関:まず、その対象に関心を向けること。興味と好奇心を持ち、相手と関わること。コーチングというのは、相手に対して思いっきり関心を向けることから始まる。

コーチングのさまざまなスキルは、この「関心」とどうしてもつながる。傾聴、承認、質問、などどれをとっても、関心を向けるから本物になる。テクニックとしてやるのではなく、根底に「相手に向けた全面的な関心」があるから、テクニックが十分に機能してくる。

表面的にテクニックに走ると、表面的で嘘っぽくなる。逆に、テクニックをそんなに知らな くても、関心を本当に全面的に相手に向けていくと、スキルやテクニックというものは、いつの間にか使っているものでもある。

信じる

信:これは、信じるということ。相手を信じる。

プレーヤーは壁にぶつかったり、時に挫折を味わったりという場面に遭遇する。そうすると、自分の力に対して自信が持てなくなったり、目標に対してぶれたりということが起こる。

そんなときに、目標やその目的を見せたり、もともと持っている能力を承認して励まし力づけたり、可能性を見せたりしながら、その壁を突破させていくきっかけとなるのが伴走者としてのコーチの役割である。

「確かに無理かも」「能力ないかも」とコーチが共に沈んでしまうと、プレーヤーは浮上のきっかけを失う。何があっても、その先の可能性を信じてそれを伝え続けられるあり方が、コーチには求められる。

認める

認:相手の意見、考え、信念、観念、価値観、世界観、ビジョンなどを尊重し、「認める」ということ。この場合、自分の意見や価値観とは明らかに違うものが相手の中にはあるかもしれない。でもそれを頭ごなしに否定するのではなく、受け取って理解を示すというのが、ここでの「認める」ということ。

気をつけたいのは、「認める」というのは、「同意する」とか「従う」「承諾する」ということとは違うということ。このへんとつながってしまうので、人は相手の意見を受け取ることさえしない。あくまでも、相手の世界に理解を示すというのが重要なことである。

「否定」はどうしても「人格・アイデンティティの否定」とつながってしまうところがある。「なるほどね」「そういう考え方なんだね」「それも一理あるよね」と相手の世界をまずは認めていくことが、最初のステップとしては重要である。

そのことによって、「自分の考えを持っていてもいいんだ」「自分は発言してもいいんだ」「自分は必要とされているんだ」「自分はここで役に立っているんだ」という感覚、すなわち「心理的安全性」が育っていく。

任せる

任:任せるということ。

「任せる」という行為には、「任せる」方も「任される」方も勇気を伴う。「任せる」側は、当然ながら、自分がやった方が安全で早い。だから、育成のためには任せなければならないということは解っていながらも、ついつい自分でやってしまうということがある。しかし、これでは部下の成長は時間がかかるし、同時に、自分の手も空かないわけで、自分の次のステップへのチャレンジも時間がかかることになってしまう。

「任される」側は、自分がやったことのない仕事を引き受けるのは、それだけでストレスだ。うまくできるだろうか。上司や先輩がやったほうがうまくいくに決まっている。失敗した時の責任を取りたくない。

松下幸之助さんは、「任せて任さず」という言葉を用いた。「任せて」というのは、相手ができるかどうかわからない仕事を信じて任せるということ。「任さず」というのは、仕事は任せるけれども、投げっぱなし・放任ではなく、関心を向けて見守っているということ。時に、最終責任は取るスタンスを示しながら、大船に乗ったつもりでチャレンジをさせていくということだ。

指導者(コーチ)というのは、このようなスタンスや意識で部下(プレーヤー)と関わって

いく必要がある。

ビジネスコーチングのスキル

ここでは最低限のスキルを4つ紹介する

1.傾聴
2.承認
3.質問
4.フィードバック

1.傾聴

コーチングの傾聴における狙い(大切なこと)

コーチングにおける傾聴では、2つのことを実現する必要がある。

ひとつは、内容を理解すること

もうひとつは、「聴いてくれている」と相手が実感すること

内容を理解する

内容を理解することは言うまでもない。相手が何を言おうとしているのか、相手の話に100%集中して、相手が伝えたいと思っていることを可能な限り正確に理解すること。自分の解釈や判断、あるいは自分なりの言葉の定義ではなく、相手が伝えたいと思っている単語や内容で受け取っていくことが必要となる。

「聴いてくれている」と相手が実感すること

「耳と頭は聴いてますけど」という状態では、相手は満足しない。相手は話をしながら、その目でコーチの「聴き方」を観察している。その様子によっては、いくら耳は

聴いていて、頭では理解していても、「聴いてくれていない」「関心・興味がないのでは」「理解してくれていないのでは」「機嫌が悪いのでは」「怒らせてしまったのでは」といったような印象を話し手に与えてしまうことになる。

ボディランゲージというのは、言葉を発していなくても、何かの印象を相手に与えていることになるので、全身と耳と頭で聴く「傾聴」が必要だ。

コーチングの傾聴のやり方

上記の「狙い」を実現するために、以下のような傾聴のやり方がある。

1.うなずき

首を立てに動かすことで、聴いてますよのサインを送る。視覚を通じて「聴い てくれている」という印象を受け取る。

2.あいづち

短い言葉を使った聴いてますよのサイン。聴覚で「聴いてくれている」と受け取る。

3.キーワードの繰り返し

相手の話の内容について、重要と思われるキーワードを繰り返す聴き方。

4.感情の反射

気持ちを受け取る。話の内容からの推測や表情や声の様子から感情を受け取 るやり方がある。

「傾聴」のスキルはすべてにつながる重要なことだ。これがなければ、コーチングの肝である「信頼関係」が築けない。「聴いてくれてる」ということがわかるように聴くこと。何と言っても、これが重要なポイントだ。

コーチングにおける承認のスキル

承認というのは、相手自身や相手の言動を認めること。 褒めると認めるは少しニュアンスが違う。

承認の内容

承認の内容については、以下のようなものがある。

結果承認

つくった業績、作り出した関係。目標達成。プロジェクトの成功。成長など。

行動承認

プロセスを承認する。何事も、すべての取り組みが結果につながるかはわからない。そのため、結果承認だけでは、承認の機会が限定されてしまう。

結果はともかく、行動したこと、頑張ったこと、相手の発言などに焦点を当て、認めていく。

存在承認

存在そのものを承認していく。

「関心を向けられている」「私はこの場所にいていい存在である」「私はここにいて役に立てている」という実感が本人の中に積み上がっていくための関わり。

名前を呼んで挨拶をする。髪型や服装の変化に気づく。発言を促される。などが、存在承認のアプローチと言える。

コーチから見える本人の強みを伝えることも、存在承認につながる。

承認する目的

承認する目的は2つある。

自己信頼を積み上げる

承認することで、本人の自信を生み出す。自己承認できる状態をつくり、自己肯定感を高め、自信につなげることができる。

信頼関係の醸成

承認することで、信頼関係を生み出す。「この人はちゃんと見てくれている」「わかってくれている」という実感が膨らみ、コーチに対する信頼につながる。

承認のポイント

承認は、コーチングの場で行っていくことも大事だが、日常的に観察しながら、本人のいいところや頑張っていることに気づいたら、タイムリーに伝えることが、より効果的だ。また、いくら承認しても、相手が受け取らなければ「自己承認」にはつながっていかない。

質問を合わせ技として伝えながら、「私はこう思ったけど、自分ではどう思う?」と相手の認識を確認していくことも重要。

コーチングにおける質問のスキル

質問は、コーチの「関心」から生まれる。改めてだが、質問をスムーズかつ効果的にするためには、相手に「興味・関心・好奇心」を向ける必要がある。人に対して、無意識に関心が向きやすい人とそうではない人はいると思うが、そうでなかったとしても、意識的に関心を向けていくことが、コーチングにおいて適切な質問をしていく前提となる。

というわけで、質問のスキルをいくつかご紹介。

1.オープンド・クエスチョンとクローズド・クエスチョン

「開かれた質問」と「閉ざされた質問」。

まずクローズド・クエスチョンというのは、質問者によって、答えが制限されている質問。 YES/NOで答えられたり、択一式がクローズド・クエスチョンにあたる。

一方、オープンド・クエスチョンというのは、YES/NOでは答えられない。つまり、本人が文章や単語を考えて、自分の言葉で言わなければならないものだ。

図2

2.詳細化(掘り下げ型)質問と拡大化質問

コーチングの多くの場面で、この2つの質問は役に立つ。たくさん使いながら、相手の思考をより具体的に明確にすると同時に、コーチとコーチイーの解釈を同じものにしていくのが狙いである。

コーチは相手の話を聴いて、自分のフィルターで勝手にわかった感じになるが、多くの場合はわかったフリで止まっている。つまり、ほとんどの場合勘違いが起きていて、相手が本来言いたいことと、コーチが受け取っているものには齟齬があると思っていい。

面倒がらずに、この質問を繰り返していくことが、相手の効果的な支援につながっていく。

詳細化質問

詳細化質問は、現状についてより細かく理解したり、目標や行動プランについて、より具体 的なレベルまで落とし込んだり、いずれにしても具体的に掘り下げるために使う質問。

「それってどういうこと?」

「具体的には?」

拡大質問

拡大質問は、選択肢を拡げていくための質問。現状であれば、他に見えている事象を聴くし、目標やプランであれば、他の可能性を探っていく。

「他には?」

コーチングにおけるフィードバックのスキル

フィードバックとは、コーチからクライアントに情報を提供することである。コーチから見える事実を伝えることとコーチからの評価や解釈を伝えるやり方がある。

フィードバックの目的

フィードバックする目的は、相手のパフォーマンス向上のため、あるいは効果的に成果をつくったり成長を促したりするために、コーチから見えている、感じている情報を伝えていくことである。つまり、鏡のような存在として、相手に情報を伝えていく。その際、相手はその情報に気づいているかもしれないし、気づいていないかもしれない。

フィードバックの内容

フィードバックで伝える情報としては、大きく2つある。

1.事実をフィードバック

客観的事実を情報としてフィードバックをする。

2.評価・解釈をフィードバック

コーチの判断や解釈を伝える。時に、気持ちを伝えるということもある。

フィードバックの注意点

フィードバックはアドバイスではない。「こうしたほうがいい」と言った時点で、ティーチングの要素が加わり、本人の主体性に影響が出る。

フィードバックはあくまでも材料でありきっかけ。フィードバックを伝えて、本人が自分自信でパフォーマンスを改善していくことが、フィードバックの目的である。

フィードバックをしたあとに、

「どう受け取ったか?」

「どのように感じたか?」

「自分ではどう思うか?」

などと質問することも効果的。その反応によって、その後の改善の可能性がわかり、次のアプローチの参考になる。

ビジネスコーチングの枠組みづくり

ビジネスコーチングに限らず、コーチングを実施するときは以下のことを明らかにしてからスタートする必要がある。

・時間は何分か
・テーマは何か
・コーチングに望むことは何か

この3つの事柄を最低限、明確にし、共有することを通じて、コーチングの枠組みが作成される。コーチもクライアントも、この枠組みの中で、あるいはこの方向性においてコーチングをするという意識が明確になり、コーチングを円滑かつ効果的に進めていくことができる。

また話の本筋から逸れた場合も、戻しやすくなる。

コーチングの時間について

これは、何分が正しいという話ではない。扱うテーマは全体の流れから、何分の時間が必要化を設定すれば良い。ごく簡単なテーマでごくごく短期間あるいは1つ2つのプランを設定するということであれば15分程度でも機能する場合もあれば、大きなテーマで長期的かつ多数のプランを設定するということであれば、一日がかりということもありうる。 時間を設定することで、コーチもクライアントも、リミットを意識しながらコーチングを進めることとなり、脳みそもその期限を意識することで無意識が働きそれに応じたさまざまなアイデアを創出していく。

ビジネスコーチングのテーマ

テーマ設定は、コーチイーが自らする場合と、コーチが必要性を感じてテーマ設定する場合がある。基本的には、クライアントにテーマを確認した上で、コーチが必要と感じているテーマは最後に伝えるといい。

コーチングテーマとなりうるもの

テーマの設定は、現状と望む状態にGAPが存在するもの。テーマ設定の背景になるものとしたら、大きくは以下の3つ。

1.現状が問題で問題のない状態に戻したい(問題解決)
2.現状は問題ないが、このままにしてしておくと問題になる(リスク対応)
3.現状は問題ないが、もっと良くしたい(レベルアップ・改革)

テーマがコーチングの種類を決める

コーチングの種類をいろいろと前述したが、扱うテーマによってその種類が決まると言ってもいい。

例えば、

自分の将来像や今後のキャリアを明確にしたいということであれば、

「キャリアコーチング」

短期的な目標達成のための行動を明確にしたいということであれば、

「ビジネスコーチング」「パフォーマンスコーチング」

ビジョンを明確にするということであれば、「ビジョンコーチング」

問題解決であれば、「問題解決コーチング」「パフォーマンスコーチング」

メンタル面の改善や向上がテーマであれば、「メンタルコーチング」

対象がエグゼクティブなら、テーマに関わらず「エグゼクティブコーチング」

など

結局のところ、呼び方は何でもいい。コーチイーが扱いたいテーマによって、結果的に名前が決まる。始める前は「キャリアコーチング」を望んでいたけど、終わってみたら「メンタルコーチング」になっていたということもあるし、「キャリアもビジョンも具体的なプランも全部明確になった」というコーチングもありうる。

コーチは限られた時間の中で、コーチイーが望んでいることが最大限かなっていくように支援をしていく。

コーチングに望むこと(目的)は?

さて、コーチングの枠組みづくりの最後。「コーチングに望むこと(目的)」の共有。ここで言う「目的」というのは、長期的な目的ではなく、非常に短期的な目的のこと。つまり、「このコーチングの時間が終わる時に何を手にしていたいか」ということである。

この設定は非常に重要だ。なぜなら、双方にとってコーチングを終える基準になるものだからだ。この目的を達成するために、設定した時間を使うことになる。時間内に手に入れば、

「お疲れ様」ということだし、手に入らなければ「延長」あるいは「再設定」ということになる。

コーチングに望むこと(目的)は、いろいろだが、

「目標やプランが明確になる」

「今日はアイデア出し」

「とにかく現状の整理」

といった事柄もあるし、

「とにかくモチベーションを上げたい」

「意識を変えたい」

など、気持ち的・意識的なことも、目的となりうる。

この両面から、目的を明らかにし、設定された目的が達成されるよう、コーチはコーチングのスキルや考え方を駆使しながら支援をしていく。

コーチングの枠組み設定のタイミング

そして、これらの枠組みについて、時間は事前に明確になっているだろうが、テーマと目的はこの設定された時間で顔を合わせた状態で、

「何を話す?」「何のテーマ?」

「今日終わる時に何を手にしていたい?」

と確認は必ずすることになるが、事前にメールなどで共有しておくことも可能。そうすると、お互いに心の準備ができた状態でコーチングに臨むことができる。

ビジネスコーチングの進め方

さてここから先は、具体的なコーチングの流れを説明していく。テーマなどの枠組みが共有された上で、コーチングの流れはいろいろとあり得るが、今日はその中でいくつかの最低限のモデルを説明する。モデルというのは、コーチングのフレームワークと思っていただいてOK。

GROWモデルでコーチング

GROWモデルは、非常に一般的なコーチングの流れであり、これを理解し使えるようになれば、大抵のコーチングのテーマは対応することが可能となる。 また、コーチングだけではなく、自分の思考の整理や会議においても、この枠組みを利用して進めることもできる。

GROWというのはそれぞれ頭文字を取っている。

コーチングGROWモデルの「G」

GはGoal(ゴール)。 コーチングのテーマについて、望ましい状態を定義する。そして、この「ゴール」については2つの種類のゴールを区別しておいてほしい。

ひとつは「ビジョン」。

もうひとつは「目標」

世の中ではこの2つを同義として使っている人がたくさんいるのも知っているが、ここでは区別をする。

ビジョンとは

ビジョンというのは、「Visual」→「Vision」なので、視覚的に見えるものであるということ。そしてどちらかというと、抽象的な「状態」であるということである。 つまりビジョンというのは、視覚的にイメージできる望ましい状態のこと。イメージすることはいろいろである。

「自分自身がこんなふうになったらいい」

「将来こんな仕事ができたらいい」

「家族の状態がこんなふうになっていたらいい」

「自分の仕事を通じてお客さんがこんなふうに幸せになっていたらいい」

「世の中がこんなふうになっていたらいい」

「自分の業界がこんな状態になっていたらいい」

「将来の生活がこんなふうになっていたらいい」

など、イメージできることはさまざま。

目標とは

一方、目標というのは、具体的で達成したかどうかがわかるもの。多くの場合は数値と期限を伴う。そして期限が来た時に、達成されたのかされていないのかが明確にわかるものである。 この2種類のゴールは一対で考える必要がある。

図3

ビジョンというのは、話をしていて楽しいが、これだけでは物事が何言も進まなしい、いつまで経っても絵に描いた餅状態になりやすい。しかしビジョンは、「この状態をつくりたい」というモチベーションになるものなので、実現へのプロセスで描き続け意識し続けるものであることが望ましい。

一方で、目標はビジョンを現実にしていく上で重要な指標となる。しかし、多くの場合数字を伴うので、目標に対する苦手意識がある人が多い。しかし数字というのは、多くの場合、自分がどういう状態なのか、どこまで進んでいるのか、どこを目指すのかということを具体的に指し示してくれる非常に有効な道具であり、本来味方である。

また売上数字などは、「追われる目標」という認識もあるかもしれないが、裏を返せば、「どれだけの人を喜ばせたのか」を表す指標でもある。つまり、数字は「喜びの大きさ」「幸せの大きさ」「愛の大きさ」を表していいるとも言える。目標や数字を味方につけることは、自分の考え方ひとつで可能となる。この目標に意味付けをしていくサポートをすることも、コーチの重要な役割である。

そして、この2つを明確にしつつ、つなぎ続けていくことが、ビジョンの実現を早め、目標を確実にかつモチベーションを高く維持して達成していくポイントとなる。

この2つの関係が断絶された場合はうまくいかない。多くの場合は、目標だけに焦点がいき、それがどのようなビジョンにつながっているのかが見えなくなった結果、モチベーションが下がり、ただ追われるものに変容してしまう。

「そのテーマについてどうなったらいい?」

「どんな状態が理想?」

「そのテーマに関する目標は?」

「その目標を達成することは何につながっている?」

「そのビジョンを実現するためには、まず何を達成する必要がある?」

など

コーチングGROWモデルの「R」

RはReality(現状)である。 現状は以下の要素を確認していく。

1.事実 2.評価 3.要因 4.課題

1.事実について

まず事実については、今がどういう状態なのかを、事実ベースで明らかにしていく。 数字があれば数字。

何があって何がないのか。

何をして何をしていないのか。

2.評価について

その事実をどのように評価、解釈しているのか。 どのような意見を持っているのか。

現状は何点と言えるのか。 進捗状況は何%と言えるのか。 うまくいっているのか/いないのか。 何を頑張ったのか/何をサボったのか 工夫したことはなにか

3.要因について 現状について、0点あるいは100点でないかぎり、うまくいったこととうまくいっていない ことがある。なので、この両面から、要因を分析していく。 うまくいったことの要因は?

うまくいかなかったことの要因は?

2番の評価を扱う中で一緒に話されることでもあるかもしれない。 評価と要因のステップを明確に区別をして、きっちり進める必要は特にない。 ただ、相手が何のことを話しているのかは、コーチが区別をしながら聴いてあげる必要はあ る。

現状を明らかにする上での注意点

ビジネスシーンにおいては特に、「うまくいかなかったこと」が重点的に取り沙汰されることが多い。しかし、これでは本人が力づかない。うまくいかなかったことを未来に向けて潰していくことは重要だが、一方で、本人がつくりだしたこと、がんばったことにも焦点をあてて、力づけていく必要がある。

「今はどんな状態?」
「現状の数字を教えて」
「これまでにつくってきた成果は?」
「これまで前進させたことは?」
「やってきたことは?」
「やるべきだったけどやらなかったことは?」
「何が足りないと思っている?」
「頑張ったと自分で認められることは?」
「この間、工夫したことは?」
「うまくいった要因は?」
「うまくいかなかった要因は?」

など

コーチングGROWモデルの「O」

OはOptions(選択肢)。 ゴールがと現状が明確になると、当然ながら、現状からゴールへのギャップ(差)が明確に なる。ゴール、ここでは目標地点にいち早く到達するために、何ができるか、何が必要かと いうできるだけたくさんのアイデア出しをするのが、Optionのプロセス。

アイデアを出すのは以下の事柄

・やること
・方法ややり方
・協力者やパートナー
・道具、仕組み、ツール、テクノロジー
・時間のつくり方
・障害やリスクへの対応

そして、アイデア出しの時点では、できるかできないかはひとまず脇に置いて、できるだけたくさんのアイデアを出すことが大事。突飛なアイデアもとりあえず出してみる。形を整えたり、優先順位を決めたりするのは、後のWill(決意)のプロセスとなる。

「目標達成のために何やる?」
「有効な方法や手段は?」
「すべてが可能だとしたら、何やる?」
「今までやっていないことや避けてきたことでやったらいいと思うことは?」
「あなたにとってアイデアマンって誰?→その人なら何やりそう?」
「誰に協力してもらう必要がある?」
「協力が必要な部署や組織は?」
「使える道具や仕組みは?」
「目標達成のために変えなければならない仕組みは?」
「使ったら有効と思うさまざまな技術は?」
「実行を妨げる可能性のあることは?→どのように対応したらいい?」
「アイデアを実行に移すために、どのように時間をつくる?」
「実行のための時間は、どの時間が使えそう?」

など

コーチングGROWモデルの「W」

WはWill(意志・決意)。

目標達成、ビジョン実現のために、必要な行動を「決める」。 つまり、行動プランを決めること。また、「絶対にやり遂げる」と決意をもって臨むこと。

前述のとおり、コーチングには大きな流れがあり、それなりに長い期間の中で数回のコーチングを実施する。そのため、決める行動プランは、次回のコーチングまで。 コーチングの頻度は、相手の成長レベルや今取り組んでいるタスクの難易度、組織の状況などを考えて決めるといいが、基本的に少なくとも1ヶ月に1回はやることが望ましい。

Willでは、Optionsで出したさまざまなアイデアを行動する形に変えていく。 時間と労力には限りがあるので、見合ったプランを立てる。

出たアイデアを全部やるという場合は、優先順位をつける。
現実的でないが良さそうなアイデアをカスタマイズする。
あるいは組み合わせる。
今まで動かなかったものを動かすならば、最初の一歩目だけを決めてもいい。

いずれにしても、目標達成に向けて現状を動かしていく。

「先ほど挙げたアイデアの中から、何やる?」 「効率的に達成するプランを作ろう。どんなプランにする?」 「達成のために重要なアイデアはどれだろう」 「まず何からやる?」 「確実に一歩目を踏み出すとしたら何をやる?」 「絶対にこれだけはやらなければというアイデアは?」

「いつからやる?」「いつまでにやる?」

(行動プランの策定が終わったら) 「これで達成できますか?」 ↑クローズドクエスチョンで決意のレベルを確認する。 もし不安そうならば、過不足の調整や、内容の修正を行う。

(最終的に確認したら) 「(実行するプロセスにおいて)どのようにフォローしたらいいですか?」 ↑コーチが日常的にどのようにフォローすればいいかを確認する。 このことによって、実行の確度を上げる。また、相手の不安を解消する。

ビジネスコーチングの目標設定を明確にするSMARTモデル

コーチングを実行する際に、鍵になるのがゴール設定であり、とりわけ「目標」設定というのは重要となる。なぜなら、実行に移していったときに、到達の指標になっていくものであり、これがビジョンの実現につながったり、気持ち的には達成感を味わったりすることができるからだ。また、目標がなければ振り返りもできない。感覚的な振り返りで終わってしまう。

ということで、機能する適切な目標を設定するためのモデルを紹介しておく。 それが「SMART」モデル。これも、頭文字を並べているものだが、目標を設定した際に、このすべての項目を網羅しているかを当てはめることによって、目標として適切なものが設定されているかを確認することができる。

S:Specific:具体的
Stretch:ストレッチ
M:Measurable:測定可能
A:Attainable:到達可能
R:Relevant:関連づいている
T:Time Phase:期限付き

Specific

具体的であるということ。何をするのかがわかっている状態。何をすれば達成なのかが、自分も客観的にも判断できる状態で内容が決められているということ。

Stretch

ストレッチというのは、可動範囲を伸ばすためにすることである。ストレッチは伸ばす行為だが、まったく痛くない状態で伸ばしても可動域は広がらない。ちょっと痛いなと思うところまで伸ばすから、その可動域を拡げることができる。

ビジネスで言えば、自分の能力よりも少し高い目標にチャレンジするということ。そのレベル感、サイズ感になっているかの確認をする。「できる範囲でやれる」目標になっている場合は、もう少しチャレンジを促す必要がある。

Measurable

測定可能であること。期限が来た時に測れる状態であるということ。つまりできる限り定量的になっている、数字を伴う目標になっているということだ。

Attainable

到達可能であること。到達が見込めない目標にはモチベーションがかからない。心のどこかで、「どうせできない」という心理が働いてしまう。無茶無謀ではなく、頑張れば届く範囲の目標を設定すること。

Relevant

関連性があるということ。例えば個人の目標であれば、それが自分の人生の意味ある未来につながっているか、あるいは自分のビジョンにつながっているか、より大きな目標とつながっているかということ。 または、自分が所属する組織の目標とつながっているかということ。組織の中で何らかの目標に取り組んでいるのに、全く関係のない目標に取り組んでいるとしたら、このRelevantを満たさないということになる。

Time Phase

期限付きであるということ。期限のない目標は、まったく機能しない。達成型の目標であれば、期限が必要になるし、行動型の目標であれば、期間が必要となる。

達成型というのは、いつまでになにかをやり遂げるというもの。 行動型というのは、決められた期間で行動を繰り返していくもの。(月○回とか週○回な ど)

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まとめ

ビジネスコーチングは、ビジネスでマネジメントをする上で、欠かせないスキルのひとつで ある。組織を適切にマネジメントする人、あるいは自分の仕事を適切にマネジメントする人は、このコーチングの要素を、意識的にか無意識的にかはわからないが、使っていて、それが機能していると言える。

ビジネスコーチングの効果ややり方を正しく理解した上で、組織文化として浸透させ、所属するメンバーが自分の仕事を誇りに思い、やりがいを持って仕事に臨める状態を、組織的に創り出していってほしいと願うばかりである。