メンバーはこれらの大きな旗印のもとに、自分がどのように力を発揮すればいいのかが明確になります。また、一致して目指しているものがあるからこそ、互いの力を必要とし、協力しながら日々の困難にも耐えることができます。逆に、これらの要素が一致していないと、それぞれの向かう方向がバラバラになります。メンバーは良かれと思って、ことを前進させようと頑張るわけですが、結果的に本来行くべき方向性からは大きく外れ、知らぬ間に組織の足を引っ張っているということにもなります。個人としては全員がアクセルのつもりなのですが、組織としては、アクセルとブレーキを同時に踏んでいる状況になります。

組織目標の設定期間としては、半年や１年が多いですが、組織が経営層に近づくほど、長期目標も設定します。目標を掲げるからこそ、一定期間の成長や成果の度合いが目に見えてわかりますし、達成感を味わったり、不足を認識したりすることができます。短期的な通過点を明確に設けることで、組織は一丸となって進むことができます。目標は適切なサイズであることも重要です。当たり前に達成できる目標は、組織やメンバーの成長が見込めず、モチベーションも生まれません。逆に、手が届かないとわかっている無茶・無謀な目標も、「どうせムリ」という内的会話が、無意識のうちに働きます。

組織メンバーの、得意・不得意、好き・嫌い、目標ややりたい仕事、何にモチベートされるかなどを、相互に理解していくことが、まずは必要です。その上でメンバーには、組織のビジョンや目標を明確に理解してもらい、その実現や達成に向けて、各メンバーの役割や責任が何なのか。期待を明確に伝え理解してもらう必要があります。自分の役割や責任が明確になっていないと、疑いや不安を持ちながら仕事に取り組むことになり、十分な力を発揮しづらい状況となります。もちろん、組織における仕事というのは、きっちりと境界線を設けられるものでもなく、誰が担当かわからないような空白地帯が生まれます。そういう領域は全員でカバーしなければなりません。また、他メンバーの仕事をカバーしなければならない場面も生まれます。

＜信頼関係を築いていく要素＞

• ・メンバーに興味、関心を向けているか。
• ・メンバーの話に耳を傾け、理解に努めているか。
• ・メンバーの目標や望みなどを知っていて、応援できているか。
• ・自分の意見や考えを明確に伝えているか。
• ・率先して行動をしているか。
• ・実績を積み重ねているか。　など

内側だけでなく、組織の外側の利害関係者と適切な関係を築くことを通じて、組織の成果はつくりやすくなっていきます。
ここでも、自分の意見を通したいときに聴いてもらえるような状況を、日常的に築いておけるかが重要なポイントとなります。そのためには、自分のことばかりではなく、周りに関心を向け、その相手の状況や望んでいることをできるだけ理解しておくことが大事です。

当事者意識で重要なことは、どこまでのことを自分のことと思っているかの範囲です。自分の役割だけにとらわれることなく、「当事者である」という範囲を広げる意識が必要です。組織において望ましいことは、少なくとも、すべてのメンバーが「組織の目標」＝「自分の目標」と思っている状況です。一般的に当事者意識というのは、役職が上がればその範囲は広がっていくわけですが、逆に当事者意識を広く持って行動したからこそ、役職が上がったり、責任の範囲が広くなったりするとも言えます。当事者意識が欠如した状態では、「他人事」「人任せ」「無関心」状態となり、自分の役割以外のことは目を向けなくなります。

＜やりがいの一例＞

• ・自分は社会や組織の役に立てている。
• ・お客様に喜んでもらえた。
• ・好きな仕事や得意なことがやれている。
• ・仕事をしていて楽しい。
• ・好きな人と仕事ができている。
• ・自分のした仕事が形になっていく。
• ・報酬や役職が上がっていく。

それを知っているからこそ、多くの組織は、「意見を出すこと」を求めます。しかし、自分の意見を率直に言うことには、多くの人が不安や恐れを持っています。反論される。否定される。批判される。評価される。関係が悪くなる。などのことが頭をよぎりますし、実際に起きることでもあります。だから、「言わない」「遠慮する」「嘘をつく「隠し事をする」「ごまかす」「ふりをする」ということが起こります。自由に発言する雰囲気を創っていくためには、受け取る。認める。褒める。感謝する。などのことが必要です。相手の意見が正しいか、重要か、役に立つかを判断するまえに、「なるほど」「そういう考えもあるな」「意見ありがとう」と受け取ることです。「意見を言え」と言いながら、意見すると批判される。これでは意見を出すことを促進できるはずがありません。評価・判断は組織として必要ですが、内容を評価・批判する前に、意見を言ったことの承認を与えていくと、風通しのよい組織は創りやすくなります。

会議を生産的に行う、最も重要なことは、会議の「目的」の設定と共有です。何のための会議なのか。これは参加するすべてのメンバーが明確な状態で会議をスタートする必要があります。そうでなければ、どういうつもりで参加すればいいのかまったくわからないまま、ただそこにいるという状態になります。そして、会議を効率的に進めていくためには目的に応じた、「頻度」「時間」「参加者」が必要ですし、進行においては「役割」「議題の設定と優先順位」「議題ごとのゴール」「会議のルール」などを設定する必要があります。現状で設定されている会議や参加している会議はどうでしょうか。一度設定された会議は、「あるから参加するもの」という認識で何の疑問もなく継続されていきます。形骸化している会議もたくさんあります。時々目的を振り返り、その目的にふさわしい適切な形／設定に見直していく必要があります。

そもそも組織における成果とは何でしょうか。明確な定義付けがされているでしょうか。前述した目標設定ともつながる話でもありますが、成果が明確に定義されていなければ、成果が生まれているかどうかがわかりません。「１＋１」が「３」になったり「４」になったりということは、組織の成果を例える時によく使われることですが、実際にメンバーの総和以上の成果が生まれているでしょうか。実際に組織で仕事をすることによって、個人では成し遂げることのできない大きな成果を創り出すことは可能です。そして、その成果や効果を最大化していくことが望ましい状態であることは言うまでもありません。