準備を終えて、いざ当日。いよいよ会議本番となります。どのように会議をすると生産性が上がるのかの前に、どのような会議は生産性が上がらないのかについて少し考えてみようと思います。

会議の生産性を落とす要因 〜こんな会議はイヤだ〜

・誰も積極的に発言しない
・誰かが一方的に話し続けている
・声の大きな人の議題が優先される
・内職をしている
・話を聴いていない
・何も決まらない
・毎回同じような話をしている
・時間通りに始まらない
・時間通りに終わらない
・メンバーに過不足がある
・会議の役割が不明確
・決定事項を誰も引き受けない
・議題が後から出てくる
・メンバーが携帯で話し始める
・遅れてきたメンバーに会議のプロセスを説明する
・会議の目的がわからない/共有されていない
など

組織に所属していると、大抵の場合は、複数の会議に参加することになります。さらに、役職が上がれば上がるほどに、会議に参加する機会や時間は増えていきます。みなさんの会議はどのようになっているでしょうか。

会議を3つに分ける

会議はいきなり議題に入ることが多いですが、会議は3つのフェーズに分けることをおすすめします。
1.枠組みづくり
2.会議本編
3.まとめ

なんとなく始まって、時間が来たからなんとなく終わるのではなく、始末をしっかりとつけるというのが会議においても肝心です。中でも、上記の起こりうる望ましくない状態を抑え、生産性を上げるためには、最初の枠組みづくりが肝心要。というわけで、この枠組みづくりについて、本日は紹介していこうと思います。

会議の枠組みづくりとは

枠組みづくりというのは、会議の枠組み。すなわち、どのような枠の中で会議をするのかを明確にするということです。何をする時間なのか。何を話す時間なのか。自分はどういう立場で何を発言すればいいのか。これらの意識を合わせることで、参加メンバーの心構えがしっかりとでき、同じゴールを見据えて参加することが可能となります。

会議の枠組みづくりの内容

<必須事項>
・会議全体のテーマと目的
・議題と議題ごとの目的・ゴール
・議題の優先順位
・会議における役割
・ルールの設定または確認
・時間の確認
・チェックイン

<必要に応じて>
・メンバー紹介
・会議の背景

これらは「準備編」における、アジェンダ送付で共有されている内容もありますが、会議のスタートに今一度確認することで、メンバーの意識を統一していきます。

以下、補足が必要と思うところについて、コメントしていきます。

議題と議題ごとの目的・ゴール

議題を明らかにすることはもちろん重要ですが、その上に、議題ごとの目的・ゴールを明確にすることが非常に重要です。このゴールを明確にすることにより、参加メンバーは、どのようなつもりで会議に参加すればいいのかが明確になり、発言がしやすくなります。

会議の目的・ゴールの種類

あまり意識されないですが、会議には実はいろいろな目的・種類があります。

・意思決定をするための会議
・情報共有や報告のための会議
・アイデア出しのための会議
・振り返り、学習のための会議

または、これらの混合あるいはすべてということもあります。
例えば、「アイデア出し」の会議と「意思決定」の会議では、そのプロセスが異なるし、発言に対する意識や内容も変化します。しかし、このゴールが明確に示されていないと、メンバーは混乱しますし、ファシリテーターも時間のマネジメントができません。

議題1は今日はアイデア出しまで。
議題2は情報共有。
議題3は、今日結論を出す。

こんな形で、会議のゴールを定めると、会議がスムーズに進みます。

会議における役割

会議の役割でありえるものは以下のとおり。

・ファシリテーター
・タイムキーパー
・書記
・議事録作成
・発言者(≠参加者)
(・意思決定者)

会議の規模によっては、兼務もありますが、会議を円滑に進めるためには、このような役割を定め、誰が担うのかを明確にする必要があります。

役割の交替

議題によってファシリテーターを替えるということもありえます。ファシリテーターはできるかぎり中立・公平である必要がありますから、関わりの強い議題については、ファシリテーターを他のメンバーに任せた方がいいケースはたくさんあるでしょう。

参加者ではなく発言者

会議においてはすべてのメンバーが「役割を担っている」という自覚を持つ必要があります。会議に存在していれば「参加者」という位置づけになるのですが、「参加者」ではなく「発言者」とすることで、「自分は発言する存在なのだ」という自覚が生まれます。ちょっとした違いなのですが、効果大です。

会議のルール設定

みなさんの会議では、どのようなルールが設定されているでしょうか。また設定されているとして、明確に共有されていますか?
ルールは設定されないことが多いです。また、暗黙の了解として、それぞれが違う解釈で会議をすごしていることが多いです。
会議を円滑に進めるためには、ルールの設定と共有が必須です。

ルール設定の一例

1.会議の目的や議題にそって、自分の意見・主張を尊重し、タイムリーかつ正直に発信すること。
2.他のメンバーの意見を尊重し、受け取り、理解することに努めること。一方的に批判しないこと。
3.メンバーの発言に反応を示すこと。
4.携帯電話、スマホ、タブレット、PCの操作、閲覧をしないこと。
※ただし書記に限りPC操作を可能とするが、全員が共有できる状態で示すこと
5.会議のスタート時間を守ること
6.誰かが抜ける場合は、会議全体を止めて中断すること。(戻り次第再開)

など

ルールの目的

ルールは一例なので、それぞれの組織に必要なルールを設定していただければいいのですが、ルールには目的があります。

例えば、1.2.3は、会議において発言しやすい環境をつくると同時に、相互理解を促進し、メンバーの信頼関係を構築していきます。

4は、会議に集中する状況をつくるということ。また、会議でパソコン操作をしている人は非常に多いですが、その行動を見ている周りのメンバーは、「内職しているのではないか?」「身体はここにあるけど、意識は参加していないのではないか?」と疑いを持つようになります。実際にそういう人に発言を促すと、「なんでしたっけ?」なんて反応が返ってくることも。その場合は改めて説明して…、なんてするとこれだけでも生産性を低下させていますよね。
信頼関係とメンバーの集中をつくるために必要なものです。

5はメンバーと組織の時間を大切なものとして扱うということです。時間は生産性に直結します。
6はひとりひとりの存在の重要性を自覚してもらうと同時に、中座時におきる、「理解不能」と「責任回避」を防ぎます。
いなくなれば、抜けたところで議論されたことはわからなくなります。そのまま進めば理解不能ですし、説明し直すと生産性の低下に繋がります。
また、いなくなったところで決定されたことについては、間違いなく責任を取りません。

というわけで、ルールは最小限にした方がいいと思いますが、適切に進行していくためには、ルール設定が必要不可欠です。

ルールへの同意

ルールは設定するだけではなく、ひとつひとつ同意をとっていきます。「同意した」という事実が必要です。でなければ、ルール違反があったときに指摘をしても、行動の改善にはつながらないからです。

ルール違反

ルール違反があったときは、ファシリテーターは指摘します。メンバーの言動に関するルール違反の事実を伝えればいいです。必要であれば、ルールがあるという事実。そして、ルールに同意しているという事実を伝えましょう。

また、ルール違反はファシリテーターだけではなく、すべてのメンバーが指摘し合う状態をつくることも重要となります。会議のオーナーシップが強まり、この会議を重要と思えば思うほどに、互いのやりとりも増えていきます。

チェックイン

最後にチェックイン。チェックインは、ホテルで言えば入館手続き、飛行機であれば、搭乗手続きのこと。つまり、会議におけるチェックインは、「この会議に身も心も入りますよ」という手続きのことだ。

ひとり一言ずつ発言することを通じて、会議に入っていく準備をする。話し内容は例えば以下のとおり。

・会議への意気込みや気持ち
・クリアリング
これに加えてアイスブレイク的な要素を加えてもいいかもしれない。最近のトピック。自分の中での流行。仕事をしていて嬉しかったこと。小さい頃ハマっていたことなど。仕事以外の話に触れることも、場を和ませたり、以外な共通点を見つけ親近感が生まれたりと、思わぬことを引き起こしてくれる可能性がある。

クリアリングについて

クリアリングというのは、自分の意識をクリアにするという意味。人はさまざまな状況の中で会議に入ってくる。たくさんの業務において意識を向けなければならないことがたくさんある中で、どこかに意識をおいたまま会議に入っても、意識が散漫になり、集中できない。
というわけで、何か気になっていることや、会議に集中できない何らかの要素がある場合、その事柄を口にすることで、一旦手放していくということをする。
その場で解決することもあるかもしれないが、多くのことはそうではない。口にすることで、一旦脇に置きましょうという感じで進めていく。ただし、口にすることで、その人は自分だけで抱え込んでいたものを聴いてもらえた、わかってもらえたという安心感があるし、他の人も、その状況に理解を示したりと、状況がわかった上で会議に入っていけるため、余計な気を回さなくてすむ。

まとめ

というわけで、今日は会議本編の冒頭部分、「枠組みづくり」を扱った。枠組みがゆるい中で進む会議があまりにも多い。スポーツでも勝ち方やルールが曖昧だと、そもそも競技にならなかったり、面白くなかったりする。勝ち方は何で、何がどうなればゴールで、そのプロセスにおけるルールは何なのか。これが明確になっているので、プロセスが面白い。会議も同様である。枠組みをバッチリつくって、会議をエキサイティングなものになるよう、ファシリテーターはリードしなければならない。

次の記事

生産性を劇的に上げる会議のファシリテーション〜プロセス編③会議本編〜

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