1on1がさまざまな企業に広がってきています。
しかし、
「とりあえずやれ!」
と言われて、1対1で対話をしてみるけれど、
何をすればいいのかよくわからない。

そもそもやり方を教わってないし…、
という声もよく聴きます。

課題はいろいろあります。

その中で今日は、
1on1を機能させるためにもっとも重要と言っても過言ではない、
「1on1の目的」
について掘り下げていきます。

この記事をよんでわかること

  • 1on1の目的の考え方
  • 誰のための1on1であるのか
  • 1on1の一般的な目的
  • 組織における1on1の目的との「つながり」の重要性

こんな人にオススメ

  • 1on1をやっているが話すことがなくて困っている人
  • 1on1の目的を見失っている人
  • 1on1が「やらされ感」になっている人
  • 1on1を導入してみたが思うように機能しないとお悩みの組織・人事の方

記事の信頼性

筆者は…、
1on1を2000人以上に実施。
リーダーシップやコーチングに関する研修を15年以上実施している。 1on1やビジネスコーチングの研修を100本以上やってきた。 仕組みづくりにも携わっている。

言葉の定義

ビジネスにおける1on1は、
組織の「マネジャー」とその「メンバー」の間で、
実施されることが多いです。

そのためこの記事では、1on1の対象を、
「マネジャー」と「メンバー」と表記しています。

「マネジャー」と「メンバー」というのは、組織によっては、
「上司」と「部下」
「メンター」と「メンティ」
「教育係」と「新入社員(若手)」

などにも置き換えられます。

1on1は上記のような関係で実施されることもありますから。

というわけで、
ご自身の立場や状況に応じて読み替えながらご覧ください。

1on1ミーティングの目的「結論」から

1on1ミーティングは何のためにやるのか。
結論は、
「1on1ミーティングの目的はいろいろある」
「1on1ミーティングの目的はどうにでも設定できる」
「1on1ミーティングの目的は誰のためにもできる」
「1on1ミーティングの目的に「一般的な正解」はない」

というわけで、
これを掘り下げながら説明していきます。

見失いがちになる「目的」

1on1に限らず、
目的というのは見失いがちになります。
目の前の「やること」
とか
「やり方」「手順」に人はフォーカスしますから、
そもそも何のためにやっているのかが、
どうしても薄れがちになります。

しかし…、
「やり方」の前に
「スキルアップ」の前に
「手順」の前に
「何を話すか?」の前に

「何のためにやるのか」

つまり「目的」を明確にしなければなりません。
目的によって、
やることは変わりますし、
使うスキルが変わりますし、
手順が変わります。

例えば、
高校野球のチームがあって、
「甲子園に行くため」にやるのか
「楽しむため」にやるのか
「健康のため」にやるのか
「仲間づくりのため」にやるのか

目的によって、
そのプロセス(過程)は大きく変わると思いませんか?
練習のメニュー。
練習の時間。
練習の強度。
お互いの関わり方。

1on1も同じです。
何を目的にするかによって、
やり方や話すことは大きく変わります。

「1on1ミーティングは部下のための時間である」ってホント?

これ、
よく言われることなんです。

そして、間違いなくメンバーのための時間です。

でも勘違いしてはいけません。
「部下のため『だけ』の時間ではないということです」

「1on1ミーティングは部下のための時間である」

これを言われたマネジャーは、
「メンバーに喋らせなきゃいかねい」
とか
「マネジャーは喋っちゃいけない」
という風につなげます。

そうすると一気に不自由になる。
1on1に思いっきり「制限」が掛かりますから。

この言葉だけを捉えて、誤解が生まれやすいので、
導入する組織において説明する人は、
目的をもう少し丁寧に説明する必要があります。

1on1の目的はいくつも考えられる

1on1ミーティングはいろいろな可能性を秘めています。
1on1をやることで、
何につながるのか。

考えられる1on1の「目的」を書いてみますね。

1on1ミーティングをすることで、
これらの目的を達していくという,

「つながり」をイメージしながら、
ご覧いただければと思います。

  • メンバーのパフォーマンス向上
  • メンバーの現状理解
    • 業務進捗状況
    • 心身(健康面)の状況
    • プライベートの状況
    • 信念や価値観 など
  • メンバーの業務遂行支援
  • メンバーのモチベーション維持、向上
  • メンバーのストレス軽減
  • メンバーの不満の解消
  • メンバーの価値観理解
  • メンバーの夢、ビジョンの明確化および理解
  • メンバーの主体性向上
  • メンバーの当事者意識のアップ
  • マネジャーの1on1スキル向上
  • マネジャーの夢、目標の共有
  • 相互の信頼関係向上
  • 組織の方向性理解
  • 組織の一体感のアップ

など…

と主だったものを挙げましたが、
他にもまだあるかもしれません。

1on1の実施はそもそも企業活動の目的と存在意義につながる

企業の存在意義は、
市場が求める価値を提供し、
人々を喜ばせることにあります。

その結果、利益を手にし、
企業を維持・存続・発展させていく。

この循環です。

逆も言えます。
利益を手にしているからこそ、
社会において企業を維持・存続し、
人々に商品やサービスを提供していくことができる。

企業の中で行う活動は、
すべてこの目的に沿うものであるはず。

1on1を実施することは、
非常に間接的に感じられますが、
確実に、そして決して大げさではなく、
この企業・組織活動の目的や、その存在意義に繋がります。

だからこそ、
会社単位で一丸となって、
この仕組みを理解し、活用していくことに意味があるのです。

1on1の各回で設定する目的

これは、
組織の状況や、メンバーの状況、
また、マネジャーの状況などによって、
設定される目的が変化します。

基本的には、
メンバーの「パフォーマンスが向上される」
ということを意図して、
1on1は実施すべきと思います。

その「パフォーマンスを向上する」
というのは、
メンバーやその人の状況によって変わりますよね。

1on1の目的例 その1「ストレスの解消・軽減」

■テーマ:悩み事や困りごと

なにかメンタル的なブレーキが掛かっていて、
思うように動けなくなっているという、
状況があるかもしれません。

そんなときは、
親身になってただその相手の悩みや困りごとに、
耳を傾けるということが必要になります。

人は、
「今まで言えなかった」とか、
「一人で抱えていた」というようなことを、
誰かが聴いてくれた
というだけで、心が軽くなったりします。

あるいは、
「このマネジャーは、
私の今の状態をわかってくれている」
と思うと、
やはり安心感が確実に増します。

1on1の目的例 その2「メンバーの目標への行動推進」

■テーマ:目標達成に向けた行動プランの作成

1on1におけるスタンダードな流れです。

仕事における目標はなにか。
その目標に向けて、現状はどうか?
目標達成に向けてやるべきことや工夫することはなにか?
具体的にいつまでに何をやるか。

ということを設定します。
具体的に動けばいいだけの行動プランが決まると、
人は結構やる気になるものです。

1on1の目的例 その3「より深い相互理解」

■テーマ:「お互いの仕事における価値観の共有」

  • 仕事においてどのようなことを…
  • 大事にしているか
  • 大事にしていきたいか
  • 大事にしてきたか
  • 今後どのような仕事をしていきたいか。
  • 自分のチームをどんなチームにしたいか。

業務の遂行に関する状況の確認などは、
コミュニケーションされたりもするのですが、
こういったより大きな枠組みに関する話は、
意外と共有されずに過ごされます。

また、
わかっているつもりでも、
これらのことは時間の経過や経験と共に、
移り変わったり、変容したりもします。

ということで、
1年の間で時々は、
こういうことを共有するのもいいのではないかなと思います。

他にもいろいろ

ここに挙げた目的とテーマは、
本当にごくごく一部のこと。

目的を意識して、テーマを設定すると、
本当に山ほど、話すことが湧き出てきます。

メンバーの目的を意識し、
時に自分の目的を意識し、
常により大きな組織の目的を意識することで、

1on1は必ずうまく行きます。

組織は1on1の大目的を示す必要あり

1on1を導入する組織は、
その目的を論理建てて情熱的に、
マネジャーやメンバーに伝える必要があります。

本当に例えばですし、簡易的ですが…、
組織がマネジャーやメンバーを巻き込みたいときに、
こんな風に目的を伝えたらいいかも…、
というものを書いておきます。

いずれにしても、
組織として狙うところが明確になっていて、
それがマネジャーやメンバーから共感が得られるもので、
かつ論理的でわかりやすく、
「熱」を帯びている必要があるなと思います。

1on1導入目的提示の例

「今は時代の流れが非常に早くなっている。
全社的に一丸となって、
すべてのメンバーが主体性を持ち、
自分の意見・考えを発信することを通じて、
多様性をもって難局を乗り越えていく必要がある。

そうすることで、
この企業の社会的な存在意義は強まり、
多くのお客さんにより良いサービスを提供することが可能となる。

そのためにも、
全社員が安心して自分自身を発揮することができる。

そして、
社員が安心して自分の力を発揮していくためには、
「心理的安全性を高める必要がある」

心理的安全性というのは
自分はここにいてOKと思える心理状態のこと。
意見を言ってOKなんだ。
自分の存在は仲間に受け入れられている。
という実感のこと。

この心理的安全性を高めるためには、
やはり身近なマネジャーとの関係を、
より信頼性の高いものにすることが不可欠。

そして、この1on1ミーティングというのは、
相互理解を深め、
信頼関係を促進していくために、
非常に有効な機会であると考えている。

是非、
この1on1ミーティングを活用して、
マネジャーも含め、メンバーが、
心理的安全性の高い状態で仕事をする状態をつくり、
主体性を向上し、やりがいや生産性の高い状態で、
働く状態をつくりたい。

この1on1の文化が十分に浸透するには、
2〜3年かかると思っているが、
経営陣も含めて全面的にサポートする準備がある。

もちろん、この1on1という仕組みは、
大きな目的を達成するためのひとつの柱だが、
この取り組みが定着し、成功に導くためには、
全員の協力が必要だ。

1on1に関する基本的な考え方

1on1において起こしたいことについて、
「私なり」の考え方を書きます。

1on1というのは、
お互いになんでも言っていい場であったらいいと思います。

話したいこと、わかってほしいと思っていることが、
しっかりと発信されること。

聴きたいこと、わかりたいと思っていることを、
ちゃんと受信できること。

その結果、
相互理解が進み、
信頼関係が本当の意味で深まっていったらいい。

職場においてたくさんの時間を共有する人に対して、
警戒心高く、何考えているかわからない状態で仕事をするよりも、
「この人は自分のことをわかってくれている」
という安心感の中で仕事をした方が、
間違いなく生産性が高いです。
そして、同じ仕事をしていても、
日々の仕事が楽しくなります。

そして一般的には、
マネジャーとメンバーが膝を突き合わせると、
ついついマネジャーがたくさん話してしまうということがある。

なので、マネジャーは、
1on1(コーチング)のスキルを理解し実践することで、
この1on1という時間を、
両者がバランスよく話すことができる、
良質な時間にしていくことが求められる。

今日のまとめ

というわけで今回は、
「1on1の目的」
についてまとめてきました。

どうしても、
「何話せばいいのかな…」

に意識が向くのですが、その前にかならず、
「この1on1ミーティングは
そもそも何のためにやっているんだっけ?」

を確認する必要がありますし、
「今回の1on1ミーティングは何のためにやるかな…」
ということを確認して、
1on1に臨む必要があります。

目的は忘れられがちです。
必ずこの「目的」を設定して、
1on1に臨みましょう。

そうすれば必ず、
今まで以上に価値のある、
1on1ミーティングになります。

さて次の1on1ミーティングは、
何のためにやりたい
と思いますか?

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